2022年07月11日

令和4年7月のおたより

副園長 難波 忠弘


ここ最近の暑さは、夏本番といってもいのではないでしょうか。気象庁が発表したところによると、6月に2日連続の猛暑日となるのは、1875年の観測開始以来初めてのことだそうです。急激な気温の上昇の中、職員一同で子どもたちの体調に気を配りながら、お預かりしていますが、今後も猛暑日は続く予報ですので、ご家庭でも食事や睡眠が十分にとれているか等、お気を付けいただき、突然やってきた猛暑を乗り切ってまいりましょう。


さて、太陽が照り付ける猛暑の中でも、幼稚園中には元気な声が響いています。

ロータリーでは連日、プールの水遊びで「冷たい!気持ちいい!」とひんやりとした快感を楽しむ子どもたちの笑顔が見られています。


また、今年は園庭の梅の実が立派に実り、子ども達は高い場所に実った梅の実を試行錯誤しながら収穫していました。収穫した実はジャムにしたり、ジュースにしておいしくいただきました。

畑にはじゃがいもがたくさん育ち、年長組の子ども達は、収穫したてのほくほくの新じゃがを、次々と平らげています。

収穫物をどのように食したいか、どのように分け合うかを、まじめに考え合う子ども達の姿を見ると、ここでは、日々の生活の基本が子ども中心である事を改めて感じます。


子ども中心というと子どもたちにとってはストレスがなく、自由気ままに過ごせていると思われがちですが、実はそうでもありません。

自由といっても、皆が好き勝手に過ごしていては社会は成立しません。

そのため、自分の思いと相手の思いが違うことを遊びの中で感じ、自分の気持ちに折り合いをつけることを少しずつ学んでいきます。


児童精神科医の故佐々木正美先生は、著書の中で、「友達に共感できる子ほど、自分を見つめる力も強い」と述べています。さらに「子どもは遊びの中で友達と自分が、意見や考え方が違うことに気付きます。その結果、あるときは自分の意見を押し通し、またあるときは友達の立場や主張を認めて優先させるなど、状況を見つめながら、自分の取るべき態度や役割を作り上げていきます。

このようにして、子ども達は「相手を理解すること」と「自分自身への認識」を深めることを同時にやっていくのです。」とあります。

つまり、友達への共感や理解が深まれば深まるほど、自分のことをよく見つめることのできる子になっていくのです。


現在、世界はVUCAな時代の中にあるといわれています。

VUCAとは、Volatility(激動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)という4つの英単語の頭文字を並べて作られた言葉ですが、まさに人類は今、目まぐるしく変化し、先の見通しのつかない、そしていろいろな考え方などが複雑に絡み合い、何が良くて何が悪いのかの基準も極めてあいまいな状況に直面しているといえるのかもしれません。

このような状況下において、これから先の時代を生きていかなければならない子どもたちが幼少期にどのような心の力を身に付けておくべきかということに関わる議論もとても盛んになっています。

そして、こうした議論の中心におかれているものの一つが非認知能力だといえます。

非認知能力については、次回以降に詳しくお伝えさせていただきますが、OECD(経済協力開発機構)は、2015年のレポートでそれを社会情緒的スキルと言い換えたうえで、「他者との協働」に関わる力、「長期的目標の達成」に関わる力、「感情の管理」に関わる力という3つの要素からなるとしています。


人間社会では一人では生きてはいけません。

幼稚園での生活の間に、様々な人とのやりとりを通して、自分を受け入れられることと、友達の気持ちに共感する経験をたくさん積んでほしいと思います。



7月は、これまでの園生活で、子ども達一人ひとりの中に育ってきた仲間との関わりや園生活の仕方、自分を表現する力をより多様な広がりを持たせていきたいと思います。


7日には「七夕の日」を学年ごとに楽しみます。


そして満3歳児と年少児はお祭りの雰囲気を楽しむはやしっこ祭りがあります。


年中組の夕涼み会は、いつもと全く違う「夕闇の幼稚園」、という状況のなかで子ども達には自分の想像力を大いに働かせてもらい、仲間達と一緒に経験する特別な出来事を楽しみたいと考えております。

ファンタジーの世界の中で遊ぶ経験と言えるのではないでしょうか。


お泊まり会は、説明会でもお伝えしましたように、年長児達が緑豊かな自然のなかで、「自分ですること、仲間と助け合うこと、そして先生や仲間達とたっぷり関わること」をじっくり経験することで、一回り大きく成長することと思います。

園では子ども達の気持ちが、お泊まりに対して、前向きになるように丁寧に関わりながら準備を進めていきたいと考えています。



 この1学期、若葉会役員の皆様や、父親会議、サークル活動の皆様には大変お世話になり、有り難うございました。

園生活の子ども達がそうであるように、保護者の皆様もこの間に、多くの方々との触れ合いがあったことと思います。

人と関わることは大変で、苦労がつきものです。

けれど一歩踏み出すことで、人間関係に大きな広がりや強い繋がりが出来ることと思います。

子育ての為にも人と人とのネットワークを作られると、その中で子ども達は育ち合い、社会性が育まれます。

幼稚園では、皆様の園生活をきっかけにした、子育て仲間との良い出会いを応援したいと思います。

そして、2学期もよろしくお願い申し上げます。



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posted by 管理人 at 13:53| 園だより

2022年06月08日

令和4年6月のおたより

 五月晴れとは5月のさわやかな晴天のことを指すのが、今では一般的なようですが、実は旧暦の皐(さつき)は6月を指すそうで、どんよりした梅雨の合間にみられる晴天を表すそうです。


 二四節気、七二候と細かく四季を表し日常の生活に役立ててきた我が国ならではの生活表現の豊かさには、なるほどと感心する一方で、だんだん先人の知恵や常識といわれてきたことが私たちの生活の中で変化し薄れているのかもしれません。


 特に農業や水産など第一次産業には影響が大きい天候ですが、園生活においても、日頃から天気には、とても気を配り過ごしています。

子ども達にとって、お天気は心にも体にもとても影響するからです。


 6月からしばらくは熱中症に対しての気配りが重要になるだけでなく,雨降りが続く中で、外に出られないことから、出し切れない子ども達のパワーをバランスよく発散させ、保育活動に興味を向けられるようにしようと、この季節ならではの園生活、保育内容の充実を図っていきたいと考えております。


 そして保育室内にとどまりがちな子ども達の動線も考えながら環境設定を行っていきます。


 テラスやホールも十分に活用しますが、子ども達の合羽(レインコート)、これが園生活でとても必要になる場面が出てまいります。

少しぐらいの雨であれば、みんなで合羽を着てのお散歩や、お当番活動などをすることで、子ども達にとっては、つまらなくなりがちな雨降りお天気が、一気に味方になり、「自然に触れる、自然と関わる」魅力的な体験になるからです。

様々な雨音を楽しんだり、園庭やアスレチック広場の水の流れを観察したり、そして延いては毎日使っている水の大切さなどへ子ども達の気付きから関心へと保育に生かせることは山ほどあるのです。




さて、親子遠足では、大勢の保護者の皆様と子ども達が心地よい緑に囲まれた荻野運動公園で、とても和やかに、のびのびと活動することが出来ました。


少し前まで集まることの難しさに怯えるばかりでしたが、政府のマスク着用に対する見解も丁度良いタイミングで出たこともあり、親子同志で触れ合いを楽しむことが出来たのが何よりでした。

今を乗り越える方法や工夫をすることで、改めて出来ることが見えてくるようになりました。


これから夏に向けて子ども達が心も体ものびのびと健康な生活を送れるようにするためにも、ウィズコロナ時代に向けて、様々ある制約を考え直し、新たな挑戦をする時期に来ているのかもしれません。

皆様のご参加、ご協力ありがとうございました。



ところで今月は、保育参観を予定しております。

日頃の園の様子をご覧頂くことになりますが、内容の詳細については後日お知らせいたします。



 年少児をはじめ新入園の子ども達は、入園して2か月もたたないうちに、園生活の仕方を少しずつ身に着け、自分で楽しいことを見つけ始めています。


 動画でご覧いただいたように、これからも全身で感触遊びを楽しむことが、ますます増えてくると思います。

その中でも砂や土や水は、子ども達にとって何よりの教材です。

砂場には、毎学期2トンほどの新しい砂を入れております、アスレチックの赤土も毎年、感触の良い滑らかな土を購入して入れています。

これらに水が加わることで形が変わり、遊びが広がります。

どれも、形として残らない物ではありますが、子ども達は自分の感覚を磨いてくれる変幻自在の砂や土と戯れ、遊び込むことで、物質が変化する面白さ、自分の手で造り上げる楽しさ,そこでたまたま出会った子ども同士で感じあえる「共感性」,この素材が持つ可塑性(作っては壊れる)が導いてくれる繰り返しの中で、工夫を凝らしていくめげない気持ち等を必ず獲得していくのです。


毎日お着替えを持ち帰り、お洗濯が大変なことになっているかもしれませんが、どうぞこんな経験は幼児期だからこそ、と受け止めて頂きたくお願い申し上げます。



園生活がすっかり自分のものになってきた年中児たちは、「つるんで遊ぶ、誘い合って遊ぶ」姿が多いにみられるようになってきました。

まだルールの共有も仲間意識も緩い中での遊びの姿ですが、「鬼決めじゃんけん」が楽しかったり、ままごとのシチュエーションをやけに複雑にしてみたりと、年中児らしい姿で他者と関わることを求め、その修行中という様子がほほえましくも見え、人間関係の難しさを実感している健気な様子も目に入ります。

いわゆる「けんかするほど仲が良い」という現状でしょうか。



 年長児たちは園生活の達人への道はまだ遠く、年長児だからこそ課せられるお当番活動にも翻弄されている様子が見られます。

まだ遊びたい、今のタイミングではない、などグループの友だちとの意見の調整がつかない中、一人一人の違った思いが交錯し、もめていることが多く見られます。


この「もめごと」が毎日あらゆる場面で噴出するのですが、まさにこの時が、「学びの時」と考えております。

「せんせいどうするの?」「○○ちゃんがやった!」「ぼくはやってない!」そんな声があちこちから聞こえる中、

「どうしたらよかったのかなー?」

と答えをはぐらかすかのように「子どもからの問いに問いで返す」時間を大切に繰り返す日々です。

幼児期の子ども達にとって、特に仲間とのかかわりの中で生まれた疑問や問題は、答えを導き出していく過程が大切だと考えます。



園長  難波 香織

posted by 管理人 at 15:13| 園だより

2022年05月31日

令和4年5月のおたより

今、園庭には大きなこいのぼりが、青い空の中、風を受けて泳いでいます。


そのコントラストが美しく、毎年のことながらその姿に目を奪われます。

こいのぼりは、端午の節句の象徴で、子どもの誕生と健やかな成長を願って、大空に掲げられるようになったことが由来です。

園のこいのぼりは、縦ではなく横に張ってつるしているため、子ども達は吸い寄せられるように大きなしっぽをつかもうと、触りにきます。

そんな子ども達を見て、コロナ禍といわれる状況下でも、こいのぼりの由来の通り、「健康」と「安全」という子どもの成長にとって一番大切な社会状況が、一日も早く提供できるようになって欲しいと願うばかりです。



さて、私はよくカメラを首から下げ、園内中を歩き回っているのですが、保育室に私が入ると、子ども達の目線が集まります。

新入園児の中には、馴染みのない大人の登場に動きを止める子どももいれば、担任の先生にそっと身を寄せる子もいます。

緊張させてしまったことを心の中で詫びつつも、私(侵入者?)に対して情報を収集しようとする敏感な姿に感心します。


そんなとき、改めて人は生まれながらに主体的だと感じます。

多くの研究で、人は本来、主体的存在であるといわれています。


それを感じたのは、先日の我が子との関わりでした。

ここのところの気温の上昇もあり、軽い水遊びをしたときのことです。

ベランダに水を入れたベビーバスを置き、娘を抱き上げてそこに入れようとすると、彼女は足を縮めて泣き出しました。

昨年、水遊びを思い切り楽しんでいたので、あれ?と思いつつ、すぐに抱き上げ「ごめんね」と言ってから、そのままシャボン玉遊びに切り替えました。

しばらくして、娘がバシャバシャと水を触りだしました。

カップに水を入れたり出したりし、陽の光をうけて水しぶきがきらきら光るのを見て笑い声をあげ、それから足を挙げて自ら水の中に入っていきました。


 突然、抱き上げられて自分の意思とは関係なく水に入れられそうになり不安になる。

自分のペースで、対象物(水)と関わることで、少しずつその楽しさを感じ、自分から水の中に入っていく。

娘のそんな姿から改めて大事なことを教えてもらい、「なるほどねー」と独り言をいっていました。

人は準備ができていないのに無理やりさせられると不安になったり、自信を無くしたり、場合によってはやろうとしなくなってしまいます。

けれど、どんなことでも、自分のタイミングで心が動いたときに行動できると、生き生きとし始める。

そう考えると、昨今、主体性がないといわれる子どもは、そもそも主体性が乏しいのではなく、主体的に行動しにくい環境が多いために、いつのまにか主体的に動けなくなってしまうのではないか、と感じました。


そうはいっても、家庭生活ではそんなに悠長なことはいってられないかもしれません。

仕事や家事が怒涛の様に続く日々の中で、子どもの思いに耳を傾け、待ってあげて、子どもの意思(主体性)を大切にするといっても、なかなか難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


しかし、幼稚園は違います。

子どもが始めたことをまず大事にし、その姿を肯定的に受け止めます。

保育者が子どもとのそんな関わりを重ねることから、子ども達の中に「もっとやりたい」という意思が生まれます。

子どもが考えたことを受け止めて、生かす生活を展開する中で、子ども達は生き生きと遊びや生活に取り組んでいきます。

そんな「やりたい!」と思う環境づくりを先生たちは日々試行錯誤しながら構成し、提供をしています。


こんな日々の保育の様子を、クラス担任は、クラスだよりで発信をしていますが、保護者の皆様もクラスで起きている子ども達のわくわく感を楽しみにして頂きたいと思います。




先日のお誕生会後の歓談での、ある保護者の方のお話です。

その方のお子様は、幼稚園でみつけた大切なものをポケットにいれて持ち帰ってきているそうで、ある時は石、または枯れた花や葉っぱだったりと、毎日聞くお話が楽しみだったそうです。ある日、小さな蛾(もちろん息絶えていました)を持って帰ってきたそうで、お母様も、それにはびっくりしたけれども、今まで虫が苦手だった我が子の変化に、ある意味感心された、というエピソードでした。

大人にとっては、ほんの小さな虫ですが、子どもにとっては、「お友だちが捕ってくれた」だけで、大切な宝物に昇格するのです。



心理学者のピアジェは子どもは小さな科学者だといっていますが、まさしくその通りだと日々感じます。

レーチエルカーソンが「センスオブワンダー」で神秘さや不思議さに目を見張る心の大切さを記したように、日々子ども達は主体的に心を動かしているのです。


もうすでに、園内では様々な虫が活動を始めています。もしかしたらお子様の絵本バックやズボンのポケットにダンゴムシや蝶々などが入っていて、保護者の方は悲鳴をあげるかもしれません。

でも自然に対する「関心、探求心が芽生えている」と捉えて、子どもたちの行為を肯定的に見守り、その先へと伸びていく育ちを楽しみにしていただけたらと思います。




さて、3年ぶりに行いました身体測定、クラス懇談会には、保護者の皆さまにご協力頂き、滞りなく行うことが出来ました。

ご協力ありがとうございました。

その折、新年度の若葉会役員にご協力頂き、心よりお礼を申し上げます。


懇談会では、どのクラスもとても和やかに行うことが出来、その流れで親子遠足も、保護者の皆様と一層、親睦が深まるようになればと考えております。

この行事を契機に、保護者の皆さまと園がしっかり連携し、子ども達の園生活がより充実したものと成る様にしていきたいと存じます。


どうぞよろしくお願い申し上げます。



副園長 難波 忠弘

posted by 管理人 at 00:00| 園だより