
日本中に猛暑と豪雨をもたらした夏休みも終わり、いよいよ2学期が始まります。
2学期は、どの学年の子ども達にとっても、更に充実した保育活動が展開する生活が続きます。多様で豊かな遊びを通して、この実体験の積み重ねが、一人ひとりの心や身体にたくさんの栄養を与えてくれることと思います。
しかし久しぶりの幼稚園生活に体がついていかないお子様もいるかもしれません。
ご家庭でも少しずつ規則正しい生活のペースを取り戻して頂くのも大切ですが、お子様が登園を楽しみにできるように、幼稚園でも様々な受け入れ準備を進めております。
きっと夏休み中にあった楽しかったことや、出来るようになったことなどを、子ども達は沢山お話してくれる事と思いますので、先生達は、じっくりと子ども達の声に耳を傾け、久しぶりの幼稚園に多少の緊張を感じていることも想像できますので、子ども達にとって無理のない、ゆったりとした受け入れを心掛け、新学期のスタートを切りたいと考えております。
アスレチック広場には新しい遊具を設置いたしましたので、目新しさも手伝って、きっと外遊びもより充実していくと思います。
また、空調や保育室内外の集中清掃も済みました。
さて、この様に2学期の準備と共に、教職員は、この夏休みの期間に様々な研修に参加し、日々の保育に生かせるようにと、学びを深めてまいりました。
私も久しぶりに対面で行われた研修にいくつか参加致しました。
オンラインの研修もありましたが、特に対面の研修はコロナウィルスの感染が止まない中でしたが、やはり昔気質の私にとっては、直接学ぶことで、より熱が入るような気がいたしました。
暑い中出かけるのは年齢的にも疲れましたが、対面研修が出来るようになった喜びも付加され、心地よい疲れとなりました。
その中で東京大学で行われた「あたらしい保育イニシアチブ」という保育に携わる官・民・学が「対話をはじめよう」をコンセプトに学びあう研修もありました。
そこでは保育を取り巻く多種多様な価値観と出会い、現代社会の様相を垣間見るような研修でした。
しかしその中で最も注目したのは、今の世界情勢の中で果たすべき保育の役割についてのセッションでした。
世界中の保育現場を研究されている先生の講義でしたが、子どもは一市民である、として「対話」を保育、教育活動の中心に据えている、イタリアのレッジョエミリア市の教育の紹介と共に、今年に入り、欧州幼児教育研究機構をはじめとして、全米や東南アジアの保育団体が一斉に幼児期の子ども達が保育活動の中で民主主義を学ぶ機会を作るべきであるというメッセージを発信しているということを報告されておりました。
これはウクライナへのロシアの軍事侵攻への抗議と専制主義がもたらす悲惨な世界情勢を受け、世界の幼児教育、保育の潮流として
「子どもは権利を有する主体であり、自分が世界の一員であることを身の回りの環境と対話しながら、遊ぶ事、探求する事、知る事、実践する事を通して学ぶ主体である」
という民主主義の価値観へいざなう必要性が議論されているとのことでした。
そして、保育者はこの価値観を共有し、保育の柱に民主的な価値観を据え、かつ持続可能な社会(SDGs)を担っていく子どもたちを育んでいこう、という強いメッセージが発せられたということでした。
民主的な学びへの取り組みの事例で、サークルタイムを保育に取り入れ、子どもたちが話し合う時間を作り、様々な問題についてディスカッションをしている園の話も聞くことが出来ました。
共感しながら実践事例を聞くうちに、ふと自園の様子を振り返ると、実は25年程前から、毎日の帰りの会や子どもたちと話し合うべき問題が起きた時等の集まり方は、円集合だったのです。
クラスの皆で顔を見合いながら、みんなでワイワイ話ができるような帰りの会が出来るように、と意識した円集合でした。
そして、子ども達には、帰る時までに、何か伝えたいこと、感じたこと、聞いてほしいことが有って欲しい、そんな園生活を毎日送ってほしいと願っていました。
先生達には、円集合で行う帰りの会は、歌を唄って、手紙を配り、先生の話を聞くだけの時間にはしない、子どもの声を聴いて、語り合えるような子ども達と先生の「やり取りのある」良い時間にしてほしいと伝えておりました。
私たちの保育には、既に子どもが自分の思いを発信し合えるサークルがあるのです。
改めて申しますと、私は、自園の保育を通して子ども達には、問題解決能力の一つとして、民主的な思考力が育ってほしいと願っておりました。
そしていま取り組んでいる日常の保育が、今の世界情勢を機にその方法論に注目が集まっていることに驚きました。
また私たちの日常の園生活で行っている子ども達の話し合いの場面やそこに携わる保育者の関わり方が、いかに重要な役割を果たし、導くことが出来るのかということを改めて真摯に考えるきっかけとなりました。
やり方が同じ、似ているからと言って、必ずしも成果があるとは言えないとも思います。私たち保育者がどのような思いで子どもと関わり、子どもと信頼関係を築き、子ども同士の対話の場面に処するのか、先生達とも改めて学ぶ機会を持ちたいと強く感じております。
2学期も保護者の皆様と手を携え、子どもたちを真ん中に置いた保育をしていきたいと考えております。
ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。