2023年01月11日

令和5年1月のおたより

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園長 難波 香織


朝、窓の外を眺めると、車のフロントガラスに霜が降り真っ白になっているのが、今日の寒さを物語っています。


今年の年明けは晴天が続いたせいか、朝の冷え込みが特に強かったように思います。


さて本日より3学期が始まりますが、どのご家庭もお揃いで、穏やかに新年をお迎えのことと存じます。


静寂な中で迎えた新年の幼稚園もアイアイのお友だちが登園してからは、一気ににぎやかで明るい園生活が始動しております。


年末に職員総出で大掃除をした後、すべての教室のワックスがけも終わり、清々しい新年を迎えましたが、この3学期はとても短く、そして後半には子ども達にとっては、思い出深く心に刻まれる保育活動が続きます。



1月は、私たちの身近な伝承あそび、伝統的な生活に目を向け、園生活をスタートさせていきたいと考えております。


今月早々には、日本のお正月の伝統食のお餅を、お米からお餅へ変わっていく過程に興味を持ってもらい、楽しみながら餅つきを体験し、昼食時に食します。(子ども達がついたお餅は、残念ですが、衛生管理上食べません)



また、広々とした本厚木ゴルフ場をお借りして、凧あげをし、ほかにも独楽回しや羽根つき、まりつき、カルタやすごろく福笑い、お手玉など自分たちの伝承文化であるお正月遊びを身近に取り入れながら、昔遊びといわれる遊びの中に息づく、技や呼吸感を通して「杵柄(きねづか)」の体得へ小さな一歩を経験できればと考えております。


杵柄とは、「いろはかるた」にもあるのですが「昔取った杵柄(きねづか)」ということわざです。

「若いころに身につけた「技(わざ)」は、年を取っても衰えない」という事、特に「遊び」は呼吸感や細やかな技量が楽しみながら身につき、鍛えられるので人と関わる中での「生きる力」を醸成する要素がたくさん詰まっています。


映像画面を通して行うゲームでは鍛えられないとてもデリケートな「生身の人との呼吸感、距離感」です。


日常的に取り入れているわらべ歌もこの意味において「拍」や「音程」が自然に身につくことで、「杵柄」といえると考えております。




さて、特に年長児にとっては、卒園までの一日一日をより大切にしていきたいと思っておりますが、

どの学年も、園生活の中で起きるどんな出来事も、丁寧に受け止め、共感しながら、子ども達の成長につなげていきたいという思いで、先生達の頭の中は一杯だと思います。


特に3学期を迎えるころの子ども達は、今まで経験してきたことを基に、より深い思考力や探求心を発揮してくる姿が見えてきます。


ただ繰り返し同じことを遊び続けるだけでなく、より面白くするためにはどんな道具や工夫が必要かを考えたり、そのために必要な知識を求めて興味のある対象物の様子をじっくり観察したり、図鑑を調べたり、友だちと相談したり、大人に意見を求めたりする姿が増えてきます。


そこは自分で探求することの面白さへの気付きや好奇心から確実な知識の獲得への欲求ともいえる成長の変化ともいえるでしょう。


時間が去っていくのがあまりにも早く感じるのがこの3学期なのですが、

子ども達の日常生活の中で溢れ出てくる、「なぜ?どうして?」と感じる感性にしっかりと付き合いながら、子ども自身が見つけた遊びの面白さの先に見える学び、感性、知性への流れを滞らせることなく、導いていきたいと考えております。


子ども達と一緒に笑って、共に創り上げる楽しい園生活を送ることをベースに、

一人ひとりの子どもの良さを改めて実感しながら、一年間の締めくくりとしての3学期を、

教職員一同で力を合わせ、保育をしていきたいと考えております。(コロナやインフルに負けてはいられませんね!)




寒い朝が続きますが、早寝早起き、そして朝ごはんをしっかりと食べることが、何より元気いっぱいに園生活を送るために、一番大切な「成長の力の元」となります。


ご家庭の協力をお願いするとともに、子ども達の健やかな成長を支えていきたいと思います。


本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。




 なお、20日には姉妹園において幼稚園、保育園そして小学校の先生、教育委員会の先生方をお招きしての公開保育と幼・保・小の連携について学び合う研修を行うこととなりました。


國學院大學で幼保小の連携について研究をされておられる吉永安里先生をはじめとして、厚木市教育委員会にもご協力いただき、市内外の幼稚園、保育園、学校の先生方も大勢ご参加いただきます。


幼児教育の果たす役割と小学校教育への滑らかな移行をどのように図っていったらよいのか、学園としても、幼稚園教育要領の改訂のたびに何年にも渡り試行錯誤をしてきた課題でもあります。


はやし幼稚園の教員も一人でも多く参加して学びを深めたいと考えております。

そして何より幼稚園教育の現場のありのままをご覧いただくことで、小学校以降の学習指導要領への問題提起が図れるのではないかと考えております。


まずは、お互いを正しく理解し合うことが子ども達の健やかな未来を支えることになると確信していますので、学園の教職員がしっかりと学びたいと考えております。


当日は午前保育のご協力を頂く事にもなり、更に担任が不在となることもございますが、ご賢察の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

posted by 管理人 at 15:46| 園だより

2022年12月01日

令和4年12月のおたより

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副園長 難波 忠弘



 気持ちの良い秋晴が続き、子ども達は頭も身体もすべてを使って思う存分遊んでいます。


最近は、園庭にある柿の実取りに夢中です。

初めの頃は柿の木に登って手に届く範囲の柿を取るのですが、それが難しくなると、お友達と協力し合って長い棒を持ってきて、その棒を上手く使って取っています。

2歳児や年少の子ども達は、上の学年のお友達の様子をじっくり見ています。

その後、見よう見まねでやるような姿や、年長のお兄さんお姉さんや私に取ってほしいと伝えたりに来ます。


一人一人がその子なりに考え、お友達と協力し合いながら、時には頼り頼られながらの園生活です。


さらに、年長組では、取った柿を1個当たり何人で分けて、何個取ればクラス全員が食べられるのを、食べたい一心でかなり真剣にクラスで考えることもします。


そうした子ども達の生活を見ていると、生活に根ざした遊びには、様々な学びがあるのだな、と改めて実感します。





先日、興味深い記事を新聞で読みました。

日本経済新聞の【信頼できる?揺らぐ協調】という記事(1030日付)です。

新型コロナウイルス感染症の蔓延が起こり、社会基盤となる協調関係について、対面の機会が減った結果、その協調関係を築くことが難しくなっているという内容でした。

かつては、人々は対話を通して目の前の内面や第三者の評判の情報を日々集めていたのですが、現代ではスマートフォンやネットの普及によりコミュニティーとのつながりが希薄になりました。

そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけたということでした。


しかし、九州大学の橋弥和教授による実験では、生後二歳児以下の子どもは相手が自分に親切かどうかなどに関わらず、誰にでも協力する傾向が強く、1歳半くらいまでの子どもは、相手が知らないおもちゃを指さして「そこにある」と親切に教えるそうです。

つまり、子ども達は生まれながらに他者と関わることに前向きで、未来志向であるということです。



先ほど述べた柿の実とりですが、はやし幼稚園の子ども達はどうでしょうか。


柿を取るために、協力し合い、創意工夫し、意見を出し合い、目標に向かう。


はやし幼稚園の中では至る所で、あらゆる形でこのような遊びを子どもたちが生み出しています。


また、今は泥団子作りも年少から年長まで皆が夢中になっています。


アスレチックの泥がいい、砂はりんりん砦の下がさらさらだ、など子どもたち同士で泥団子づくりに大切な情報が受け継がれています。


これもはやし幼稚園の子ども達だからこその伝承文化ともいえるのでしょうか。


人と人とは本来どうあるべきなのか。


改めて考えさせられますが、少なくともこのはやし幼稚園で過ごす子ども達には、未来を前向きに生きて、他者と協力し合いながら、未来を切り開いてほしいと願い、私達は子ども達と向き合っています。




さて、先日、保育施設代表の柴田愛子先生による子育て講演会を開催しました。


柴田先生はNHKの教育番組やラジオ番組などに多数出演されておられ、幼児教育・保育関連の書籍も多数おありです。

そんなご多忙な柴田先生ですが、いつも当学園講演会では子育て真っ最中の保護者向けに、温かい言葉をかけて下さいます(柴田先生には3年連続お話しいただいています)。


実際に参加された皆様も、心がふっと軽くなり、我が子を愛する気持ちを改めて思い起こさせてくれるお話だったかと思います。


当園では毎年、保護者の方向けに、著名な先生をお招きして、講演会を開いています。


来年度も開催する予定ですので、是非楽しみにして頂きたいと思います。




 12月初めに行われる「はばたきの会」は、後日詳細な冊子を配布します。


どの行事にもいえることですが、学年での取り組み方が異なり、年齢なりの成長過程を踏まえ、今どんな経験が次に繋がっていくのか等を考えての行事ですので、お楽しみにして頂ければと思います。


そして、子ども達にとって、大きな楽しみの一つであるクリスマス会があります。

子どもにとって、「目に見えないものを信じる」という経験は、空想や想像の世界を心の内に広げ、更にはその自分の心の内面を見る経験にも繋がります。


子どもはどの子もが、いつも自分は良い子でありたいと願っています。


その思いが願いに繋がることに、意味があるのではないでしょうか。


高価なプレゼントより、大好きな大人達から、そして、目に見ることのできない誰かから「貴方はこの1年間よい子だったね」と伝えてもらえることが、その子の成長を助けると思います。


クリスマス会では、ファンタジーの世界観を作り、素敵なひと時を子ども達と過ごし、楽しみたいと考えています。




  最後に、年の瀬、お正月ですが、ご家族が一緒に過ごし、温かい時間を作るよいチャンスです。

 その一方で、場合によっては大人のペースで生活が営まれがちなこともあるかもしれません。

 どうぞ、子どもにとってふさわしい生活、時間の過ごし方への配慮もお忘れなく、ご家族の皆様がそろって、健やかな新年をお迎え下さい。
posted by 管理人 at 00:00| 園だより

2022年11月15日

令和4年11月のおたより

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園長 難波 香織 


急に朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。

朝、温かいお布団から出るのが、おっくうになってくると冬支度も本番です。


幼稚園を囲む木々の葉は落ち、重なるように敷き詰められ、その下には弱ったコオロギが隠れ、枯れた木の枝には、茶色いカマキリがしがみついています。

虫好きの子ども達に一旦は捕まえられるのですが

「生きてるから逃がしてあげよう」

と殊勝な言葉を添え逃がす姿が見られます。

ついこの間まで、収集することばかりに気が向いていた子ども達の「命の存在に気付いた心の変化」を感じます。

また先日のハイキングでは、年中児や年長児たちの成長への手応えを、先生たちは実感したようです。

去年に比べどの子も遅れることなく、かなり険しい山道でもしっかりと自分の足で歩ききりました。

実は運動会での子ども達の姿にも特筆したいことがありました。

それは、今年は転んで怪我をする子どもがいなかったこと、転んでも自力で立ち上がり、途中で競技を投げ出す姿がなかったことでした。



2020年、未知だったコロナウィルスの蔓延から子ども達の生活は大きく変わりました。

外出や外遊びの制限は身体を使う機会をすっかり奪いました。

その中で幼稚園生活を始める子ども達の多くは、広い場所、大勢の人への抵抗感と共に視野も狭くなっていました。

身体全体を使いこなすためのバランス感覚、体幹もとても弱くなっている様子がうかがえました。

大切な命をコロナウィルスから守り安全に育てるためには、人込みを避け、家の中で過ごすしかなかったのですから、誰のせいでもありません。

しっかり立つこと、きちんと座ること、少しの時間でも体勢を保持することが苦手な姿が多いことを私たちは実感し、何とかしなければという思いに駆られました。

それからは、子ども達が歩く経験を意識的に取り入れてきました。

また広い場所で全体を見渡すことや一点を見たり、遠くを見たり、生活の中で聞こえてくる音を見つけたり、何より話を聞く楽しい経験も積んできました。

アスレチック広場の拡張により環境も充実しただけでなく、上り下りを使った鬼ごっこや、急こう配のがけのぼりなど、先生たちは子ども達の意欲を損なわずに、身体全体を使い楽しめる遊びを意識して取り入れてきました。


その間、ちいさな怪我は沢山あったけれど、どの子も足取りが力強くなったのではないでしょうか。

年少児たちは、まだ入園して一年もたたない中ですので、これからの成長を楽しみにして頂きたいと思います。

それでもお兄さんお姉さんたちの姿に触発され、今ではドングリの森を上からのぞくと、たいてい年少組の子どもたちが遊んでいます。

先日はピンク組の子ども達が新しいアスレチックの上り棒から、いとも簡単にスルスルと降りてくる姿に出くわし「すごいねー」と声をかけると、「こんなの簡単だよー」と返ってきました。

そんな風に自信満々で答えるようになるまでに、先生達が手を差し伸べ、落ちないようにと支えてきたことを、子ども達自身は気付いていないでしょう。

いずれにしても、子どもにとっては実体験がなにより本物の力になる学びです。幼稚園の遊具、環境はすべて子ども達のために考え作られているものです。

特に遊具は、子どもにとってあえてノーリスクにはしていません。(安全基準はクリア、点検も怠りませんが)むしろ子ども自身が遊びながらリスクを察知し、自分の力と照らし合わせながらリスクを乗り超えることで、本当の意味でのリスクを避ける力が身につくと考えています。


子どもの意思が芽生えようとしているときに、危ないからあなたにはできませんと決めつけて、やらせなければ、その子のやってみようとする意欲も一緒に失っていくでしょう。


私たち保育者は、子ども自身のチャレンジしたい気持ちが動いているなら、どんなタイミングで、どこを支えることが肝心なのかを見計らい、どうやったらできるのかを子どもと一緒に考えながら、そのチャレンジを支えるのです。



幼児期だからこそ、自分の力で世界を広げていく好奇心をばねにして、生きる意欲を小さな体いっぱいに満たしてほしいと願います。


この意欲が少しの失敗や自分の思い通りにいかないときに感じる葛藤を乗り越える原動力になる筈です。

まだまだこれから続く園生活、年長児たちの闊達で生き生きと成長していく姿を通して、どんな園生活を過ごすことが子ども達の健やかな育ちに大切なのか、コロナによって覆われた暗雲の中に、少しだけ光明が見えてきたような思いです。




 さて、11月には学年やクラスを超え、自分たちの考えた世界観を作り上げていく、「りんりん祭」があります。

運動会が終わった翌々週に、年中、年長児たちは昨年のりんりん祭のことを思い出しながら、今年はみんなでどんなことをやりたいか、小さいお友だちも一緒に交えて取り組んでいくことなども伝え、クラスで話し合いを進めていました。

楽しいアィデアが、沢山出ていましたが、果たしてどんな活動になるでしょう。


「あっ!いいことかんがえた!!」

と子ども達の言葉が飛び交う様子が、今から楽しみです。

これから出るお便りには、じっくりと目を通していただき、お子様と楽しみにお話して頂ければと思います。



 日本の教育は「主体的で、対話的な深い学び」へと向かい始めています。


そのはじめの一歩が幼児教育にある、ということを、これからも保護者の皆様にはご理解いただきながら、私たちの保育の在り方をお伝えしていきたいと考えます。



posted by 管理人 at 15:23| 園だより