2022年09月15日

令和4年9月のおたより

letter.jpg

 日本中に猛暑と豪雨をもたらした夏休みも終わり、いよいよ2学期が始まります。


 2学期は、どの学年の子ども達にとっても、更に充実した保育活動が展開する生活が続きます。多様で豊かな遊びを通して、この実体験の積み重ねが、一人ひとりの心や身体にたくさんの栄養を与えてくれることと思います。



 しかし久しぶりの幼稚園生活に体がついていかないお子様もいるかもしれません。

ご家庭でも少しずつ規則正しい生活のペースを取り戻して頂くのも大切ですが、お子様が登園を楽しみにできるように、幼稚園でも様々な受け入れ準備を進めております。


 きっと夏休み中にあった楽しかったことや、出来るようになったことなどを、子ども達は沢山お話してくれる事と思いますので、先生達は、じっくりと子ども達の声に耳を傾け、久しぶりの幼稚園に多少の緊張を感じていることも想像できますので、子ども達にとって無理のない、ゆったりとした受け入れを心掛け、新学期のスタートを切りたいと考えております。



 アスレチック広場には新しい遊具を設置いたしましたので、目新しさも手伝って、きっと外遊びもより充実していくと思います。

また、空調や保育室内外の集中清掃も済みました。


 さて、この様に2学期の準備と共に、教職員は、この夏休みの期間に様々な研修に参加し、日々の保育に生かせるようにと、学びを深めてまいりました。

私も久しぶりに対面で行われた研修にいくつか参加致しました。


 オンラインの研修もありましたが、特に対面の研修はコロナウィルスの感染が止まない中でしたが、やはり昔気質の私にとっては、直接学ぶことで、より熱が入るような気がいたしました。

暑い中出かけるのは年齢的にも疲れましたが、対面研修が出来るようになった喜びも付加され、心地よい疲れとなりました。



 その中で東京大学で行われた「あたらしい保育イニシアチブ」という保育に携わる官・民・学が「対話をはじめよう」をコンセプトに学びあう研修もありました。

そこでは保育を取り巻く多種多様な価値観と出会い、現代社会の様相を垣間見るような研修でした。

しかしその中で最も注目したのは、今の世界情勢の中で果たすべき保育の役割についてのセッションでした。

世界中の保育現場を研究されている先生の講義でしたが、子どもは一市民である、として「対話」を保育、教育活動の中心に据えている、イタリアのレッジョエミリア市の教育の紹介と共に、今年に入り、欧州幼児教育研究機構をはじめとして、全米や東南アジアの保育団体が一斉に幼児期の子ども達が保育活動の中で民主主義を学ぶ機会を作るべきであるというメッセージを発信しているということを報告されておりました。

これはウクライナへのロシアの軍事侵攻への抗議と専制主義がもたらす悲惨な世界情勢を受け、世界の幼児教育、保育の潮流として


「子どもは権利を有する主体であり、自分が世界の一員であることを身の回りの環境と対話しながら、遊ぶ事、探求する事、知る事、実践する事を通して学ぶ主体である」


という民主主義の価値観へいざなう必要性が議論されているとのことでした。

そして、保育者はこの価値観を共有し、保育の柱に民主的な価値観を据え、かつ持続可能な社会(SDGs)を担っていく子どもたちを育んでいこう、という強いメッセージが発せられたということでした。


民主的な学びへの取り組みの事例で、サークルタイムを保育に取り入れ、子どもたちが話し合う時間を作り、様々な問題についてディスカッションをしている園の話も聞くことが出来ました。

共感しながら実践事例を聞くうちに、ふと自園の様子を振り返ると、実は25年程前から、毎日の帰りの会や子どもたちと話し合うべき問題が起きた時等の集まり方は、円集合だったのです。


クラスの皆で顔を見合いながら、みんなでワイワイ話ができるような帰りの会が出来るように、と意識した円集合でした。

そして、子ども達には、帰る時までに、何か伝えたいこと、感じたこと、聞いてほしいことが有って欲しい、そんな園生活を毎日送ってほしいと願っていました。


 先生達には、円集合で行う帰りの会は、歌を唄って、手紙を配り、先生の話を聞くだけの時間にはしない、子どもの声を聴いて、語り合えるような子ども達と先生の「やり取りのある」良い時間にしてほしいと伝えておりました。


 私たちの保育には、既に子どもが自分の思いを発信し合えるサークルがあるのです。


 改めて申しますと、私は、自園の保育を通して子ども達には、問題解決能力の一つとして、民主的な思考力が育ってほしいと願っておりました。

 そしていま取り組んでいる日常の保育が、今の世界情勢を機にその方法論に注目が集まっていることに驚きました。

また私たちの日常の園生活で行っている子ども達の話し合いの場面やそこに携わる保育者の関わり方が、いかに重要な役割を果たし、導くことが出来るのかということを改めて真摯に考えるきっかけとなりました。


 やり方が同じ、似ているからと言って、必ずしも成果があるとは言えないとも思います。私たち保育者がどのような思いで子どもと関わり、子どもと信頼関係を築き、子ども同士の対話の場面に処するのか、先生達とも改めて学ぶ機会を持ちたいと強く感じております。



 2学期も保護者の皆様と手を携え、子どもたちを真ん中に置いた保育をしていきたいと考えております。


ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。


園長 難波 香織
posted by 管理人 at 13:44| 園だより

2022年07月11日

令和4年7月のおたより

副園長 難波 忠弘


ここ最近の暑さは、夏本番といってもいのではないでしょうか。気象庁が発表したところによると、6月に2日連続の猛暑日となるのは、1875年の観測開始以来初めてのことだそうです。急激な気温の上昇の中、職員一同で子どもたちの体調に気を配りながら、お預かりしていますが、今後も猛暑日は続く予報ですので、ご家庭でも食事や睡眠が十分にとれているか等、お気を付けいただき、突然やってきた猛暑を乗り切ってまいりましょう。


さて、太陽が照り付ける猛暑の中でも、幼稚園中には元気な声が響いています。

ロータリーでは連日、プールの水遊びで「冷たい!気持ちいい!」とひんやりとした快感を楽しむ子どもたちの笑顔が見られています。


また、今年は園庭の梅の実が立派に実り、子ども達は高い場所に実った梅の実を試行錯誤しながら収穫していました。収穫した実はジャムにしたり、ジュースにしておいしくいただきました。

畑にはじゃがいもがたくさん育ち、年長組の子ども達は、収穫したてのほくほくの新じゃがを、次々と平らげています。

収穫物をどのように食したいか、どのように分け合うかを、まじめに考え合う子ども達の姿を見ると、ここでは、日々の生活の基本が子ども中心である事を改めて感じます。


子ども中心というと子どもたちにとってはストレスがなく、自由気ままに過ごせていると思われがちですが、実はそうでもありません。

自由といっても、皆が好き勝手に過ごしていては社会は成立しません。

そのため、自分の思いと相手の思いが違うことを遊びの中で感じ、自分の気持ちに折り合いをつけることを少しずつ学んでいきます。


児童精神科医の故佐々木正美先生は、著書の中で、「友達に共感できる子ほど、自分を見つめる力も強い」と述べています。さらに「子どもは遊びの中で友達と自分が、意見や考え方が違うことに気付きます。その結果、あるときは自分の意見を押し通し、またあるときは友達の立場や主張を認めて優先させるなど、状況を見つめながら、自分の取るべき態度や役割を作り上げていきます。

このようにして、子ども達は「相手を理解すること」と「自分自身への認識」を深めることを同時にやっていくのです。」とあります。

つまり、友達への共感や理解が深まれば深まるほど、自分のことをよく見つめることのできる子になっていくのです。


現在、世界はVUCAな時代の中にあるといわれています。

VUCAとは、Volatility(激動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)という4つの英単語の頭文字を並べて作られた言葉ですが、まさに人類は今、目まぐるしく変化し、先の見通しのつかない、そしていろいろな考え方などが複雑に絡み合い、何が良くて何が悪いのかの基準も極めてあいまいな状況に直面しているといえるのかもしれません。

このような状況下において、これから先の時代を生きていかなければならない子どもたちが幼少期にどのような心の力を身に付けておくべきかということに関わる議論もとても盛んになっています。

そして、こうした議論の中心におかれているものの一つが非認知能力だといえます。

非認知能力については、次回以降に詳しくお伝えさせていただきますが、OECD(経済協力開発機構)は、2015年のレポートでそれを社会情緒的スキルと言い換えたうえで、「他者との協働」に関わる力、「長期的目標の達成」に関わる力、「感情の管理」に関わる力という3つの要素からなるとしています。


人間社会では一人では生きてはいけません。

幼稚園での生活の間に、様々な人とのやりとりを通して、自分を受け入れられることと、友達の気持ちに共感する経験をたくさん積んでほしいと思います。



7月は、これまでの園生活で、子ども達一人ひとりの中に育ってきた仲間との関わりや園生活の仕方、自分を表現する力をより多様な広がりを持たせていきたいと思います。


7日には「七夕の日」を学年ごとに楽しみます。


そして満3歳児と年少児はお祭りの雰囲気を楽しむはやしっこ祭りがあります。


年中組の夕涼み会は、いつもと全く違う「夕闇の幼稚園」、という状況のなかで子ども達には自分の想像力を大いに働かせてもらい、仲間達と一緒に経験する特別な出来事を楽しみたいと考えております。

ファンタジーの世界の中で遊ぶ経験と言えるのではないでしょうか。


お泊まり会は、説明会でもお伝えしましたように、年長児達が緑豊かな自然のなかで、「自分ですること、仲間と助け合うこと、そして先生や仲間達とたっぷり関わること」をじっくり経験することで、一回り大きく成長することと思います。

園では子ども達の気持ちが、お泊まりに対して、前向きになるように丁寧に関わりながら準備を進めていきたいと考えています。



 この1学期、若葉会役員の皆様や、父親会議、サークル活動の皆様には大変お世話になり、有り難うございました。

園生活の子ども達がそうであるように、保護者の皆様もこの間に、多くの方々との触れ合いがあったことと思います。

人と関わることは大変で、苦労がつきものです。

けれど一歩踏み出すことで、人間関係に大きな広がりや強い繋がりが出来ることと思います。

子育ての為にも人と人とのネットワークを作られると、その中で子ども達は育ち合い、社会性が育まれます。

幼稚園では、皆様の園生活をきっかけにした、子育て仲間との良い出会いを応援したいと思います。

そして、2学期もよろしくお願い申し上げます。



続きを読む
posted by 管理人 at 13:53| 園だより

2022年06月08日

令和4年6月のおたより

 五月晴れとは5月のさわやかな晴天のことを指すのが、今では一般的なようですが、実は旧暦の皐(さつき)は6月を指すそうで、どんよりした梅雨の合間にみられる晴天を表すそうです。


 二四節気、七二候と細かく四季を表し日常の生活に役立ててきた我が国ならではの生活表現の豊かさには、なるほどと感心する一方で、だんだん先人の知恵や常識といわれてきたことが私たちの生活の中で変化し薄れているのかもしれません。


 特に農業や水産など第一次産業には影響が大きい天候ですが、園生活においても、日頃から天気には、とても気を配り過ごしています。

子ども達にとって、お天気は心にも体にもとても影響するからです。


 6月からしばらくは熱中症に対しての気配りが重要になるだけでなく,雨降りが続く中で、外に出られないことから、出し切れない子ども達のパワーをバランスよく発散させ、保育活動に興味を向けられるようにしようと、この季節ならではの園生活、保育内容の充実を図っていきたいと考えております。


 そして保育室内にとどまりがちな子ども達の動線も考えながら環境設定を行っていきます。


 テラスやホールも十分に活用しますが、子ども達の合羽(レインコート)、これが園生活でとても必要になる場面が出てまいります。

少しぐらいの雨であれば、みんなで合羽を着てのお散歩や、お当番活動などをすることで、子ども達にとっては、つまらなくなりがちな雨降りお天気が、一気に味方になり、「自然に触れる、自然と関わる」魅力的な体験になるからです。

様々な雨音を楽しんだり、園庭やアスレチック広場の水の流れを観察したり、そして延いては毎日使っている水の大切さなどへ子ども達の気付きから関心へと保育に生かせることは山ほどあるのです。




さて、親子遠足では、大勢の保護者の皆様と子ども達が心地よい緑に囲まれた荻野運動公園で、とても和やかに、のびのびと活動することが出来ました。


少し前まで集まることの難しさに怯えるばかりでしたが、政府のマスク着用に対する見解も丁度良いタイミングで出たこともあり、親子同志で触れ合いを楽しむことが出来たのが何よりでした。

今を乗り越える方法や工夫をすることで、改めて出来ることが見えてくるようになりました。


これから夏に向けて子ども達が心も体ものびのびと健康な生活を送れるようにするためにも、ウィズコロナ時代に向けて、様々ある制約を考え直し、新たな挑戦をする時期に来ているのかもしれません。

皆様のご参加、ご協力ありがとうございました。



ところで今月は、保育参観を予定しております。

日頃の園の様子をご覧頂くことになりますが、内容の詳細については後日お知らせいたします。



 年少児をはじめ新入園の子ども達は、入園して2か月もたたないうちに、園生活の仕方を少しずつ身に着け、自分で楽しいことを見つけ始めています。


 動画でご覧いただいたように、これからも全身で感触遊びを楽しむことが、ますます増えてくると思います。

その中でも砂や土や水は、子ども達にとって何よりの教材です。

砂場には、毎学期2トンほどの新しい砂を入れております、アスレチックの赤土も毎年、感触の良い滑らかな土を購入して入れています。

これらに水が加わることで形が変わり、遊びが広がります。

どれも、形として残らない物ではありますが、子ども達は自分の感覚を磨いてくれる変幻自在の砂や土と戯れ、遊び込むことで、物質が変化する面白さ、自分の手で造り上げる楽しさ,そこでたまたま出会った子ども同士で感じあえる「共感性」,この素材が持つ可塑性(作っては壊れる)が導いてくれる繰り返しの中で、工夫を凝らしていくめげない気持ち等を必ず獲得していくのです。


毎日お着替えを持ち帰り、お洗濯が大変なことになっているかもしれませんが、どうぞこんな経験は幼児期だからこそ、と受け止めて頂きたくお願い申し上げます。



園生活がすっかり自分のものになってきた年中児たちは、「つるんで遊ぶ、誘い合って遊ぶ」姿が多いにみられるようになってきました。

まだルールの共有も仲間意識も緩い中での遊びの姿ですが、「鬼決めじゃんけん」が楽しかったり、ままごとのシチュエーションをやけに複雑にしてみたりと、年中児らしい姿で他者と関わることを求め、その修行中という様子がほほえましくも見え、人間関係の難しさを実感している健気な様子も目に入ります。

いわゆる「けんかするほど仲が良い」という現状でしょうか。



 年長児たちは園生活の達人への道はまだ遠く、年長児だからこそ課せられるお当番活動にも翻弄されている様子が見られます。

まだ遊びたい、今のタイミングではない、などグループの友だちとの意見の調整がつかない中、一人一人の違った思いが交錯し、もめていることが多く見られます。


この「もめごと」が毎日あらゆる場面で噴出するのですが、まさにこの時が、「学びの時」と考えております。

「せんせいどうするの?」「○○ちゃんがやった!」「ぼくはやってない!」そんな声があちこちから聞こえる中、

「どうしたらよかったのかなー?」

と答えをはぐらかすかのように「子どもからの問いに問いで返す」時間を大切に繰り返す日々です。

幼児期の子ども達にとって、特に仲間とのかかわりの中で生まれた疑問や問題は、答えを導き出していく過程が大切だと考えます。



園長  難波 香織

posted by 管理人 at 15:13| 園だより