2022年12月01日

令和4年12月のおたより

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副園長 難波 忠弘



 気持ちの良い秋晴が続き、子ども達は頭も身体もすべてを使って思う存分遊んでいます。


最近は、園庭にある柿の実取りに夢中です。

初めの頃は柿の木に登って手に届く範囲の柿を取るのですが、それが難しくなると、お友達と協力し合って長い棒を持ってきて、その棒を上手く使って取っています。

2歳児や年少の子ども達は、上の学年のお友達の様子をじっくり見ています。

その後、見よう見まねでやるような姿や、年長のお兄さんお姉さんや私に取ってほしいと伝えたりに来ます。


一人一人がその子なりに考え、お友達と協力し合いながら、時には頼り頼られながらの園生活です。


さらに、年長組では、取った柿を1個当たり何人で分けて、何個取ればクラス全員が食べられるのを、食べたい一心でかなり真剣にクラスで考えることもします。


そうした子ども達の生活を見ていると、生活に根ざした遊びには、様々な学びがあるのだな、と改めて実感します。





先日、興味深い記事を新聞で読みました。

日本経済新聞の【信頼できる?揺らぐ協調】という記事(1030日付)です。

新型コロナウイルス感染症の蔓延が起こり、社会基盤となる協調関係について、対面の機会が減った結果、その協調関係を築くことが難しくなっているという内容でした。

かつては、人々は対話を通して目の前の内面や第三者の評判の情報を日々集めていたのですが、現代ではスマートフォンやネットの普及によりコミュニティーとのつながりが希薄になりました。

そこに新型コロナウイルスが追い打ちをかけたということでした。


しかし、九州大学の橋弥和教授による実験では、生後二歳児以下の子どもは相手が自分に親切かどうかなどに関わらず、誰にでも協力する傾向が強く、1歳半くらいまでの子どもは、相手が知らないおもちゃを指さして「そこにある」と親切に教えるそうです。

つまり、子ども達は生まれながらに他者と関わることに前向きで、未来志向であるということです。



先ほど述べた柿の実とりですが、はやし幼稚園の子ども達はどうでしょうか。


柿を取るために、協力し合い、創意工夫し、意見を出し合い、目標に向かう。


はやし幼稚園の中では至る所で、あらゆる形でこのような遊びを子どもたちが生み出しています。


また、今は泥団子作りも年少から年長まで皆が夢中になっています。


アスレチックの泥がいい、砂はりんりん砦の下がさらさらだ、など子どもたち同士で泥団子づくりに大切な情報が受け継がれています。


これもはやし幼稚園の子ども達だからこその伝承文化ともいえるのでしょうか。


人と人とは本来どうあるべきなのか。


改めて考えさせられますが、少なくともこのはやし幼稚園で過ごす子ども達には、未来を前向きに生きて、他者と協力し合いながら、未来を切り開いてほしいと願い、私達は子ども達と向き合っています。




さて、先日、保育施設代表の柴田愛子先生による子育て講演会を開催しました。


柴田先生はNHKの教育番組やラジオ番組などに多数出演されておられ、幼児教育・保育関連の書籍も多数おありです。

そんなご多忙な柴田先生ですが、いつも当学園講演会では子育て真っ最中の保護者向けに、温かい言葉をかけて下さいます(柴田先生には3年連続お話しいただいています)。


実際に参加された皆様も、心がふっと軽くなり、我が子を愛する気持ちを改めて思い起こさせてくれるお話だったかと思います。


当園では毎年、保護者の方向けに、著名な先生をお招きして、講演会を開いています。


来年度も開催する予定ですので、是非楽しみにして頂きたいと思います。




 12月初めに行われる「はばたきの会」は、後日詳細な冊子を配布します。


どの行事にもいえることですが、学年での取り組み方が異なり、年齢なりの成長過程を踏まえ、今どんな経験が次に繋がっていくのか等を考えての行事ですので、お楽しみにして頂ければと思います。


そして、子ども達にとって、大きな楽しみの一つであるクリスマス会があります。

子どもにとって、「目に見えないものを信じる」という経験は、空想や想像の世界を心の内に広げ、更にはその自分の心の内面を見る経験にも繋がります。


子どもはどの子もが、いつも自分は良い子でありたいと願っています。


その思いが願いに繋がることに、意味があるのではないでしょうか。


高価なプレゼントより、大好きな大人達から、そして、目に見ることのできない誰かから「貴方はこの1年間よい子だったね」と伝えてもらえることが、その子の成長を助けると思います。


クリスマス会では、ファンタジーの世界観を作り、素敵なひと時を子ども達と過ごし、楽しみたいと考えています。




  最後に、年の瀬、お正月ですが、ご家族が一緒に過ごし、温かい時間を作るよいチャンスです。

 その一方で、場合によっては大人のペースで生活が営まれがちなこともあるかもしれません。

 どうぞ、子どもにとってふさわしい生活、時間の過ごし方への配慮もお忘れなく、ご家族の皆様がそろって、健やかな新年をお迎え下さい。
posted by 管理人 at 00:00| 園だより

2022年11月15日

令和4年11月のおたより

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園長 難波 香織 


急に朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。

朝、温かいお布団から出るのが、おっくうになってくると冬支度も本番です。


幼稚園を囲む木々の葉は落ち、重なるように敷き詰められ、その下には弱ったコオロギが隠れ、枯れた木の枝には、茶色いカマキリがしがみついています。

虫好きの子ども達に一旦は捕まえられるのですが

「生きてるから逃がしてあげよう」

と殊勝な言葉を添え逃がす姿が見られます。

ついこの間まで、収集することばかりに気が向いていた子ども達の「命の存在に気付いた心の変化」を感じます。

また先日のハイキングでは、年中児や年長児たちの成長への手応えを、先生たちは実感したようです。

去年に比べどの子も遅れることなく、かなり険しい山道でもしっかりと自分の足で歩ききりました。

実は運動会での子ども達の姿にも特筆したいことがありました。

それは、今年は転んで怪我をする子どもがいなかったこと、転んでも自力で立ち上がり、途中で競技を投げ出す姿がなかったことでした。



2020年、未知だったコロナウィルスの蔓延から子ども達の生活は大きく変わりました。

外出や外遊びの制限は身体を使う機会をすっかり奪いました。

その中で幼稚園生活を始める子ども達の多くは、広い場所、大勢の人への抵抗感と共に視野も狭くなっていました。

身体全体を使いこなすためのバランス感覚、体幹もとても弱くなっている様子がうかがえました。

大切な命をコロナウィルスから守り安全に育てるためには、人込みを避け、家の中で過ごすしかなかったのですから、誰のせいでもありません。

しっかり立つこと、きちんと座ること、少しの時間でも体勢を保持することが苦手な姿が多いことを私たちは実感し、何とかしなければという思いに駆られました。

それからは、子ども達が歩く経験を意識的に取り入れてきました。

また広い場所で全体を見渡すことや一点を見たり、遠くを見たり、生活の中で聞こえてくる音を見つけたり、何より話を聞く楽しい経験も積んできました。

アスレチック広場の拡張により環境も充実しただけでなく、上り下りを使った鬼ごっこや、急こう配のがけのぼりなど、先生たちは子ども達の意欲を損なわずに、身体全体を使い楽しめる遊びを意識して取り入れてきました。


その間、ちいさな怪我は沢山あったけれど、どの子も足取りが力強くなったのではないでしょうか。

年少児たちは、まだ入園して一年もたたない中ですので、これからの成長を楽しみにして頂きたいと思います。

それでもお兄さんお姉さんたちの姿に触発され、今ではドングリの森を上からのぞくと、たいてい年少組の子どもたちが遊んでいます。

先日はピンク組の子ども達が新しいアスレチックの上り棒から、いとも簡単にスルスルと降りてくる姿に出くわし「すごいねー」と声をかけると、「こんなの簡単だよー」と返ってきました。

そんな風に自信満々で答えるようになるまでに、先生達が手を差し伸べ、落ちないようにと支えてきたことを、子ども達自身は気付いていないでしょう。

いずれにしても、子どもにとっては実体験がなにより本物の力になる学びです。幼稚園の遊具、環境はすべて子ども達のために考え作られているものです。

特に遊具は、子どもにとってあえてノーリスクにはしていません。(安全基準はクリア、点検も怠りませんが)むしろ子ども自身が遊びながらリスクを察知し、自分の力と照らし合わせながらリスクを乗り超えることで、本当の意味でのリスクを避ける力が身につくと考えています。


子どもの意思が芽生えようとしているときに、危ないからあなたにはできませんと決めつけて、やらせなければ、その子のやってみようとする意欲も一緒に失っていくでしょう。


私たち保育者は、子ども自身のチャレンジしたい気持ちが動いているなら、どんなタイミングで、どこを支えることが肝心なのかを見計らい、どうやったらできるのかを子どもと一緒に考えながら、そのチャレンジを支えるのです。



幼児期だからこそ、自分の力で世界を広げていく好奇心をばねにして、生きる意欲を小さな体いっぱいに満たしてほしいと願います。


この意欲が少しの失敗や自分の思い通りにいかないときに感じる葛藤を乗り越える原動力になる筈です。

まだまだこれから続く園生活、年長児たちの闊達で生き生きと成長していく姿を通して、どんな園生活を過ごすことが子ども達の健やかな育ちに大切なのか、コロナによって覆われた暗雲の中に、少しだけ光明が見えてきたような思いです。




 さて、11月には学年やクラスを超え、自分たちの考えた世界観を作り上げていく、「りんりん祭」があります。

運動会が終わった翌々週に、年中、年長児たちは昨年のりんりん祭のことを思い出しながら、今年はみんなでどんなことをやりたいか、小さいお友だちも一緒に交えて取り組んでいくことなども伝え、クラスで話し合いを進めていました。

楽しいアィデアが、沢山出ていましたが、果たしてどんな活動になるでしょう。


「あっ!いいことかんがえた!!」

と子ども達の言葉が飛び交う様子が、今から楽しみです。

これから出るお便りには、じっくりと目を通していただき、お子様と楽しみにお話して頂ければと思います。



 日本の教育は「主体的で、対話的な深い学び」へと向かい始めています。


そのはじめの一歩が幼児教育にある、ということを、これからも保護者の皆様にはご理解いただきながら、私たちの保育の在り方をお伝えしていきたいと考えます。



posted by 管理人 at 15:23| 園だより

2022年10月03日

令和4年10月のおたより

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 園長 難波 香織

 毎週末のように台風がやってくることで、災害への備えを強く意識させられる一方で、この地域では比較的被害も少なく、厚木は丹沢や大山が背後にそびえているから雲が流れて来ないのかな?などと不思議に感じているのは私だけでしょうか。


 けれど幼稚園は雑木林に囲まれているので、台風の被害を避けるために、今夏も植木屋さんに木々の状態を見て頂き、剪定をお願いしました。


  

 ここ最近、子ども達は強い日差しを避けるように、涼しいアスレチック広場へ集まってきます。木漏れ日の中、緑色のドングリ拾いを楽しんだり、新しくできたアスレチックに果敢に挑戦したり、どんぐりの森の坂道で鬼ごっこをして駆け回り遊んでいます。

最近では年長さんの真似をして、道のない坂を上ろうと頑張っている小さい子ども達の姿も見られます。


 泥んこになりながらもチャレンジを繰り返す姿を見ていると、もうすぐやってくる運動会という行事に向けて、子ども達の「やってみよう」と思う気持ちの芽生えが何より大切だと感じます。

私たちの運動会は、その取り組み方にこだわりがあるのですが、それは運動会が本番で完成形を「見せるためのもの」ではなく、子ども達が主体となってつくる過程を重視した運動会だということです。

運動会に向けて一人一人の気持ちや今の身体的特徴や運動機能の習熟度を丁寧に受け止め、何より意欲を大切に積み上げていくことに重点を置き、運動会が終わってからも、子ども達の思いや成長が繋がっていくものにしたいと考えております。

いわゆる保育者が主導で練習をさせる事はありませんので、このおたよりをお読み頂いている頃でも、幼稚園の生活は普段とあまり変わらず、子ども達は自分の好きな遊びややりたいことに向かって過ごしているのです。

夏休み明けの子ども達は、一回りも二回りも大きくなり幼稚園に帰ってきました。

夏休み中に身体いっぱいに蓄えたエネルギーを、幼稚園中の遊びの中で様々な形で表出している様子が伺えます。

それを見ても、まさに一年の中で、今こそが運動的な活動に出会う最適な時期かもしれません。自然に自分の体の中のパワーがみなぎり、その力を外へ出し切る爽快感を感じることが出来る運動的な遊びが、この時期に充分に提供できる園環境が大切だと思います。

あくまでもやらされるのではなく自分の選択肢の中で遊びとして出会うことが大切ですし、子ども達の成長過程の中で、自然に目が向き、やってみようと、思い立つ姿を認めていくことが、幼児期の「運動会」という行事に向けての相応しさであると考えます。

そうはいっても年長児たちにとっては、幼稚園生活最後の運動会、今まで見てきたこと経験してきたことを土台に「自分たちの運動会」という意識も育ってきました。

自分たちでお話を作り、振り付けや衣装を考え、皆に見てもらいたい気持ちで張り切って取り組んでいる表現の活動、一人ひとりが自分なりに、やることを決めていく「チャレンジ」、クラスで気持ち(バトン)を繋いでいくリレー、どの競技も自分で向き合い、自分なりに受け止め、仲間と支え合うことの楽しさや喜びに背中を押されて一歩を踏み出していく姿が、とても頼もしく輝いて見えます。

年長児たちのそんな成長の姿を受けて、それぞれの学年でこの運動会のねらいには違いがある事もお伝えしたいと思います。

年中児は、当日ルールを聞いて、今まで経験してきた運動的な動きを駆使しながら臨む競技や、年長児のリレーを見る等、今までの経験から「競うこと」の高揚感を感じ、集団で何かをやることの楽しさを存分に経験できるように保育を進めております。

年少児には、外で遊ぶ楽しさを知り、周りを見ることや、関心を持って聞いたり真似をしたり、身体を使う楽しさを十分に経験することをねらいにしております。

どの学年も、その成長過程を意識して取り組んでおりますが、もちろん、中々運動的なことや外で行う活動に気が向かない子ども達がいることも、個性の一つとして先生たちは受け止めております。


 運動会当日だけが、その子のすべてではありません。


 お子様の出来た出来ないを評価することなく、温かい声援を送って頂きたいと思います。

皆が広い空の下に集い、思い切り身体を動かす心地よさを、楽しかった思い出と共に蓄えてほしいと願っています。


 皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。



 月の後半は、皆で春に植えたサツマイモの収穫とおいもパーティー、ハイキングと季節を楽しむ行事が続きます。


 まだ健康管理への気遣いは続きますが、明るい兆しも見えてきたような気がします。


 若葉会主催のはやしマルシェで、大勢の保護者の皆様にご協力頂いたことで、集うことの楽しさも復活してきました。

思い切ってマルシェの企画をして下さった若葉会執行の皆様の行動力に感謝致します。

そして伸び伸びと育っていく子ども達の命の息吹がもっともっと大きく膨らむような2学期になっていく予感と可能性を感じます。


 本当にご協力ありがとうございました。

posted by 管理人 at 00:00| 園だより