2023年03月01日

令和5年3月のおたより

はやし.jpg

園長 難波 香織 

 幼稚園のチャボが卵を産み始めると、春の気配に幼稚園が包まれ始めます。
木々の芽も梅の花も膨らみ始めてはいますが、それでもまだ冷たい風に木々は凍えています。
けれど、そんな寒風に負けることなく、園庭やアスレチックで元気に遊びまわる子ども達の姿の中に、成長の節目が見えてきました。

 幼稚園中が自分のものになってきた年少さん、先生を頼ることなく自分の遊びの幅が広がっています。
大きなクラスで展開している遊びの様子に興味を惹かれぐいぐいと年長児のクラスにも入り込んで、そこにあるおもちゃや難しそうな活動に手を伸ばし、お兄さんやお姉さんに教えてもらい、言葉も達者になって、やりとりしている姿が見えてきました。
視野が広がり、やってみたいという自分の思いが行動だけでなく言葉でも伝えられるようになりました。

 年中児たちは仲間との遊びが楽しくて、言葉や行動のキャッチボールがとても盛んになってきました。
楽しすぎて,身体中からエネルギーがほとばしるような勢いがみられます。
ある意味調子に乗って、ノリノリな感じというのでしょうか。
けれど、まだ言葉の使い方や心や体のバランスをとるのが下手で、ぶつかったり、こじれたり、もめたり、思わぬ方向に物事が進んでしまったり、思えばこんな風に進級してからずっと年中児たちは人と関わることで生まれるたくさんの難しさに日々苦労してきているのです。
しかし、これこそが 学び合うチャンスとばかり、先生たちはその間に入って取り持ったり、又は少し遠くから様子を眺め、自分たちで解決していけるように算段したり、集団生活だからこその子ども達の心と体の成長を支える保育に腐心しています。
この苦労が来年の今頃には報われるように、年長に進級してもしばらくは、もっと他者との摩擦を経験してほしいと思います。
その経験は、間違いなく一人ひとりの生きる力になるからです。

 さて、間もなく、この園を巣立とうとする年長児たちは、人形劇団プークのお芝居を見ておなかを抱えて笑ったり、アフリカのサファリのお話を聞いたりして、卒園を控え充実した日々を存分に楽しんでいる様子が感じられます。
3月に行う卒園遠足に向けての過程では、ワイワイ話し合ったり、自分たちで考える決め事で、思い通りにいかなかいことは、山ほどあるのですが、今の年長児たちは、友達と関わることの面白さやその苦労の先に格別な楽しさがあることを、自分の手で掴みつつあるような様子です。
困ったことがあっても誰かが「それならこうしたらいいんじゃない?」と声が上がり、
「いや、もっとこうしよう」と意見が飛び交う姿に「頼もしくなったな〜」としみじみ思います。
小学校へ向かう後ろ姿に「何があっても、きっと大丈夫だよ!!」と背中をポンと押してあげたいそんな思いでいっぱいです。
出来ないことや分からないことがあっても、何も心配することはありません。
学校は知らないことを学ぶところ、先生はわからないことを一緒に考えてくださる大人、そして小学校は、新しい世界への扉を自分で開けることのできる場所なのです。
「知りたい、学びたい、やってみたい」
この意欲が前を向く力になるはずです。
「世界中がみんなの前を見据える目(希望)、伸びようとする芽(力)を見守っているよ!」
と大きな声で巣立っていく子ども達に伝えたいです。
 
 子ども達の一年間の成長の軌跡をその年齢なりに振り返ってみると、そこには子ども自らの心が動いているたくさんの瞬間、場面が見られます。

幼児教育は今すぐ結果が見えるものではありません。

子ども達の根の教育、大地にしっかりと根差す一人ひとりの個性と可能性を育てる教育といえるのです。

たくさんの個性と個性がもまれ合い、響き合いながら「人となる」こんな素晴らしい瞬間に出会えることに感謝しつつ、今年度も最終月を迎えることとなりました。

 この1年間、保護者の皆様には多大なるご協力を頂き、また、私たちの保育を温かく見守って下さいましたことに感謝申し上げます。
若葉会の様々な活動のみならず、サークル活動、父親会議の力強いご協力、どれも我が子のためだけでなくはやし幼稚園の子ども達、皆への深い愛情の贈り物だと思っております。
昨今の社会情勢はコロナ禍も影響し、人と人との関係が希薄になり、子ども達が育っていく社会が不確実な要素に囲まれていく状況が続くかもしれません。
しかしここで育っている子ども達は、大人の力を信じ、自分の力を信じられる、そんな心の根を張る成長を見せてくれたのではないかと感じております。
それは何より保護者の皆様の協力体制の賜物であると思います。
まだまだ園としても未熟なところも多くありますが、教職員一同で「子ども主体の保育」の大切さを学び続け、子ども達を真ん中に置いて、保護者の皆様と手を携えていきたいと考えます。
私たちの目の前にいる子ども達は、困難な時代を切り開きながら、自分らしく生きる方法をつかんでいってくれると信じています。

これからもはやし幼稚園らしい保育活動へのご理解とお力添えをお願いしつつ、令和4年度を締めくくらせていただきたいと思います。

誠にありがとうございました。
posted by 管理人 at 13:55| 園だより

2023年02月01日

令和5年2月のおたより

はやし.jpg

 1月の中旬から下旬にかけて、気温の急降下に伴い「ここ10年で一番の寒気」というニュースが話題となりました。
そうした環境下でも、子ども達は園庭で見つけた氷で遊んだり、自分の吐く息が白いことに喜んで何度も試したり、「寒さ」を楽しむ「遊び」に変えて過ごしています。
子どもの様子をもっとよく見てみると、大人にとっては凍えるような寒さでも、臆することなく、外遊びへ向かいます。
砂場遊びをしたり、ドッジボールやサッカーなどのボール遊びや鬼ごっこ、縄跳び、アスレチックへとまっしぐらに取り掛かっています。
保育室内では、すごろくやカルタ、こま回しなどの伝承遊びが盛んです。
こま回しに至っては、こま回し用の土俵がコマの先端によって削れてしまい、土俵の木材が削れてしまうほど多くの子ども達がこま回しに夢中になっています。
 学園の教育方針である「心豊かにたくましく」の名の通り、この寒空の下でも、遊びこむ力をつけた子ども達は、たくましく園生活を送っているのだと実感します。

 また、3学期に入り、子ども達の遊びに深まりが見られるようになる中で、改めて子どもたちの遊びに向かう力=主体性・積極性や集中力が育ってきているのだなと感じます。

 さて、先日は若葉会執行委員、厚生委員の方にお手伝い頂いたおもちつきを3年ぶりに行いました。
父親会議の皆様にも餅つき(当園では木の臼と杵を使い、掛け声に合わせて力強く餅をついていきます)を手伝って頂き、50キロ近くのもち米をついて皆でつきたての餅を美味しくいただきました。
今年は2歳児から年長までが、驚くほど沢山のお餅を食しました。
自ら研いだもち米をお餅にして食すという一連の流れは、食に対する興味を引き出す経験になったのではないでしょうか。
お手伝い頂いた役員の皆様には改めて感謝申し上げます。
また、このように、普段通りの園行事を行えることについては、保護者の皆様のご理解なしには行えないと感じます。
今後とも、世相や時代が変わっても、子ども達にとって大切な経験と学びの本質を損なうことなく保育活動を続けていきたいと考えておりますので、ご理解とご協力の程、宜しくお願い致します。

 近頃、子育て関係のニュースをよく目にします。
子ども家庭庁ができ、その目玉として「異次元の少子化対策」という言葉が大々的に世間をにぎわせています。
一般的には給付金や、出産一時金など、ご家庭への直接的な支援を思い浮かべると思いますが、ここで幼稚園側の考えを少しお伝えします。
10年ほど前から待機児童問題が挙がってから、政府は保育所の規制緩和を大々的に行い、厚木市にも多くの保育施設ができました。
現在、待機児童問題は東京23区の中心部などごく一部だけとなり、「預かる施設」には余裕が生まれています。
そして、政府は保育の量から質への方向転換に移っています。
しかしながら、マスコミが挙げる質の向上は、私たち保育者にとってはどうしても首をかしげる問題が多いのです。
例えば、病児保育施設の増加や、預かり保育時間のさらなる延長などです。
これは、一見、便利なようですが、大人目線の「便利さ」なのです。
子どもの立場から考えるとどうでしょうか。
例えば、高熱にうなされ、身体が一番つらい時に幼い子どもが、安心できるお家で、大好きなお父さんお母さんに傍にいてほしいと願うことは自然なことです。
また、大人は働き方改革のもと、1日8時間労働が推奨されている一方、都心では、子どもは施設に12時間以上預けられていることも珍しくありません。
少子化対策・子育て支援は日本の未来をどう描くかに直結します。
この国で育っていく子ども達が、大人の都合で育てられるのではなく、一人ひとりの健やかな育ちを社会がしっかりと見守り、子ども自らが持っている「育つ力」をのびのびと発揮できるような支え方を考えなければならないと思います。
園と致しましても、子ども達の未来のために、行政との連携を軸に幼児教育の重要性と子どものいる家庭に対する働き方の提言などを社会に発信していきたいと思います。

 さて、2月には生活展が開かれます。
今年もお子様の一年間の遊びや生活してきた足跡を主に造形表現したものや写真を通してご覧頂きます。
当日は、お越し頂く時間を園で指定させていただくことで、担任と作品を通してお話をする時間を作りましたので、お子様とゆっくりご覧頂きたいと思います。

副園長 難波 忠弘
posted by 管理人 at 10:01| 園だより

2023年01月11日

令和5年1月のおたより

letter.jpg


園長 難波 香織


朝、窓の外を眺めると、車のフロントガラスに霜が降り真っ白になっているのが、今日の寒さを物語っています。


今年の年明けは晴天が続いたせいか、朝の冷え込みが特に強かったように思います。


さて本日より3学期が始まりますが、どのご家庭もお揃いで、穏やかに新年をお迎えのことと存じます。


静寂な中で迎えた新年の幼稚園もアイアイのお友だちが登園してからは、一気ににぎやかで明るい園生活が始動しております。


年末に職員総出で大掃除をした後、すべての教室のワックスがけも終わり、清々しい新年を迎えましたが、この3学期はとても短く、そして後半には子ども達にとっては、思い出深く心に刻まれる保育活動が続きます。



1月は、私たちの身近な伝承あそび、伝統的な生活に目を向け、園生活をスタートさせていきたいと考えております。


今月早々には、日本のお正月の伝統食のお餅を、お米からお餅へ変わっていく過程に興味を持ってもらい、楽しみながら餅つきを体験し、昼食時に食します。(子ども達がついたお餅は、残念ですが、衛生管理上食べません)



また、広々とした本厚木ゴルフ場をお借りして、凧あげをし、ほかにも独楽回しや羽根つき、まりつき、カルタやすごろく福笑い、お手玉など自分たちの伝承文化であるお正月遊びを身近に取り入れながら、昔遊びといわれる遊びの中に息づく、技や呼吸感を通して「杵柄(きねづか)」の体得へ小さな一歩を経験できればと考えております。


杵柄とは、「いろはかるた」にもあるのですが「昔取った杵柄(きねづか)」ということわざです。

「若いころに身につけた「技(わざ)」は、年を取っても衰えない」という事、特に「遊び」は呼吸感や細やかな技量が楽しみながら身につき、鍛えられるので人と関わる中での「生きる力」を醸成する要素がたくさん詰まっています。


映像画面を通して行うゲームでは鍛えられないとてもデリケートな「生身の人との呼吸感、距離感」です。


日常的に取り入れているわらべ歌もこの意味において「拍」や「音程」が自然に身につくことで、「杵柄」といえると考えております。




さて、特に年長児にとっては、卒園までの一日一日をより大切にしていきたいと思っておりますが、

どの学年も、園生活の中で起きるどんな出来事も、丁寧に受け止め、共感しながら、子ども達の成長につなげていきたいという思いで、先生達の頭の中は一杯だと思います。


特に3学期を迎えるころの子ども達は、今まで経験してきたことを基に、より深い思考力や探求心を発揮してくる姿が見えてきます。


ただ繰り返し同じことを遊び続けるだけでなく、より面白くするためにはどんな道具や工夫が必要かを考えたり、そのために必要な知識を求めて興味のある対象物の様子をじっくり観察したり、図鑑を調べたり、友だちと相談したり、大人に意見を求めたりする姿が増えてきます。


そこは自分で探求することの面白さへの気付きや好奇心から確実な知識の獲得への欲求ともいえる成長の変化ともいえるでしょう。


時間が去っていくのがあまりにも早く感じるのがこの3学期なのですが、

子ども達の日常生活の中で溢れ出てくる、「なぜ?どうして?」と感じる感性にしっかりと付き合いながら、子ども自身が見つけた遊びの面白さの先に見える学び、感性、知性への流れを滞らせることなく、導いていきたいと考えております。


子ども達と一緒に笑って、共に創り上げる楽しい園生活を送ることをベースに、

一人ひとりの子どもの良さを改めて実感しながら、一年間の締めくくりとしての3学期を、

教職員一同で力を合わせ、保育をしていきたいと考えております。(コロナやインフルに負けてはいられませんね!)




寒い朝が続きますが、早寝早起き、そして朝ごはんをしっかりと食べることが、何より元気いっぱいに園生活を送るために、一番大切な「成長の力の元」となります。


ご家庭の協力をお願いするとともに、子ども達の健やかな成長を支えていきたいと思います。


本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。




 なお、20日には姉妹園において幼稚園、保育園そして小学校の先生、教育委員会の先生方をお招きしての公開保育と幼・保・小の連携について学び合う研修を行うこととなりました。


國學院大學で幼保小の連携について研究をされておられる吉永安里先生をはじめとして、厚木市教育委員会にもご協力いただき、市内外の幼稚園、保育園、学校の先生方も大勢ご参加いただきます。


幼児教育の果たす役割と小学校教育への滑らかな移行をどのように図っていったらよいのか、学園としても、幼稚園教育要領の改訂のたびに何年にも渡り試行錯誤をしてきた課題でもあります。


はやし幼稚園の教員も一人でも多く参加して学びを深めたいと考えております。

そして何より幼稚園教育の現場のありのままをご覧いただくことで、小学校以降の学習指導要領への問題提起が図れるのではないかと考えております。


まずは、お互いを正しく理解し合うことが子ども達の健やかな未来を支えることになると確信していますので、学園の教職員がしっかりと学びたいと考えております。


当日は午前保育のご協力を頂く事にもなり、更に担任が不在となることもございますが、ご賢察の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

posted by 管理人 at 15:46| 園だより