
園長 難波 香織
幼稚園のチャボが卵を産み始めると、春の気配に幼稚園が包まれ始めます。
木々の芽も梅の花も膨らみ始めてはいますが、それでもまだ冷たい風に木々は凍えています。
けれど、そんな寒風に負けることなく、園庭やアスレチックで元気に遊びまわる子ども達の姿の中に、成長の節目が見えてきました。
幼稚園中が自分のものになってきた年少さん、先生を頼ることなく自分の遊びの幅が広がっています。
大きなクラスで展開している遊びの様子に興味を惹かれぐいぐいと年長児のクラスにも入り込んで、そこにあるおもちゃや難しそうな活動に手を伸ばし、お兄さんやお姉さんに教えてもらい、言葉も達者になって、やりとりしている姿が見えてきました。
視野が広がり、やってみたいという自分の思いが行動だけでなく言葉でも伝えられるようになりました。
年中児たちは仲間との遊びが楽しくて、言葉や行動のキャッチボールがとても盛んになってきました。
楽しすぎて,身体中からエネルギーがほとばしるような勢いがみられます。
ある意味調子に乗って、ノリノリな感じというのでしょうか。
けれど、まだ言葉の使い方や心や体のバランスをとるのが下手で、ぶつかったり、こじれたり、もめたり、思わぬ方向に物事が進んでしまったり、思えばこんな風に進級してからずっと年中児たちは人と関わることで生まれるたくさんの難しさに日々苦労してきているのです。
しかし、これこそが 学び合うチャンスとばかり、先生たちはその間に入って取り持ったり、又は少し遠くから様子を眺め、自分たちで解決していけるように算段したり、集団生活だからこその子ども達の心と体の成長を支える保育に腐心しています。
この苦労が来年の今頃には報われるように、年長に進級してもしばらくは、もっと他者との摩擦を経験してほしいと思います。
その経験は、間違いなく一人ひとりの生きる力になるからです。
さて、間もなく、この園を巣立とうとする年長児たちは、人形劇団プークのお芝居を見ておなかを抱えて笑ったり、アフリカのサファリのお話を聞いたりして、卒園を控え充実した日々を存分に楽しんでいる様子が感じられます。
3月に行う卒園遠足に向けての過程では、ワイワイ話し合ったり、自分たちで考える決め事で、思い通りにいかなかいことは、山ほどあるのですが、今の年長児たちは、友達と関わることの面白さやその苦労の先に格別な楽しさがあることを、自分の手で掴みつつあるような様子です。
困ったことがあっても誰かが「それならこうしたらいいんじゃない?」と声が上がり、
「いや、もっとこうしよう」と意見が飛び交う姿に「頼もしくなったな〜」としみじみ思います。
小学校へ向かう後ろ姿に「何があっても、きっと大丈夫だよ!!」と背中をポンと押してあげたいそんな思いでいっぱいです。
出来ないことや分からないことがあっても、何も心配することはありません。
学校は知らないことを学ぶところ、先生はわからないことを一緒に考えてくださる大人、そして小学校は、新しい世界への扉を自分で開けることのできる場所なのです。
「知りたい、学びたい、やってみたい」
この意欲が前を向く力になるはずです。
「世界中がみんなの前を見据える目(希望)、伸びようとする芽(力)を見守っているよ!」
と大きな声で巣立っていく子ども達に伝えたいです。
子ども達の一年間の成長の軌跡をその年齢なりに振り返ってみると、そこには子ども自らの心が動いているたくさんの瞬間、場面が見られます。
幼児教育は今すぐ結果が見えるものではありません。
子ども達の根の教育、大地にしっかりと根差す一人ひとりの個性と可能性を育てる教育といえるのです。
たくさんの個性と個性がもまれ合い、響き合いながら「人となる」こんな素晴らしい瞬間に出会えることに感謝しつつ、今年度も最終月を迎えることとなりました。
この1年間、保護者の皆様には多大なるご協力を頂き、また、私たちの保育を温かく見守って下さいましたことに感謝申し上げます。
若葉会の様々な活動のみならず、サークル活動、父親会議の力強いご協力、どれも我が子のためだけでなくはやし幼稚園の子ども達、皆への深い愛情の贈り物だと思っております。
昨今の社会情勢はコロナ禍も影響し、人と人との関係が希薄になり、子ども達が育っていく社会が不確実な要素に囲まれていく状況が続くかもしれません。
しかしここで育っている子ども達は、大人の力を信じ、自分の力を信じられる、そんな心の根を張る成長を見せてくれたのではないかと感じております。
それは何より保護者の皆様の協力体制の賜物であると思います。
まだまだ園としても未熟なところも多くありますが、教職員一同で「子ども主体の保育」の大切さを学び続け、子ども達を真ん中に置いて、保護者の皆様と手を携えていきたいと考えます。
私たちの目の前にいる子ども達は、困難な時代を切り開きながら、自分らしく生きる方法をつかんでいってくれると信じています。
これからもはやし幼稚園らしい保育活動へのご理解とお力添えをお願いしつつ、令和4年度を締めくくらせていただきたいと思います。
誠にありがとうございました。