2022年11月15日

令和4年11月のおたより

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園長 難波 香織 


急に朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。

朝、温かいお布団から出るのが、おっくうになってくると冬支度も本番です。


幼稚園を囲む木々の葉は落ち、重なるように敷き詰められ、その下には弱ったコオロギが隠れ、枯れた木の枝には、茶色いカマキリがしがみついています。

虫好きの子ども達に一旦は捕まえられるのですが

「生きてるから逃がしてあげよう」

と殊勝な言葉を添え逃がす姿が見られます。

ついこの間まで、収集することばかりに気が向いていた子ども達の「命の存在に気付いた心の変化」を感じます。

また先日のハイキングでは、年中児や年長児たちの成長への手応えを、先生たちは実感したようです。

去年に比べどの子も遅れることなく、かなり険しい山道でもしっかりと自分の足で歩ききりました。

実は運動会での子ども達の姿にも特筆したいことがありました。

それは、今年は転んで怪我をする子どもがいなかったこと、転んでも自力で立ち上がり、途中で競技を投げ出す姿がなかったことでした。



2020年、未知だったコロナウィルスの蔓延から子ども達の生活は大きく変わりました。

外出や外遊びの制限は身体を使う機会をすっかり奪いました。

その中で幼稚園生活を始める子ども達の多くは、広い場所、大勢の人への抵抗感と共に視野も狭くなっていました。

身体全体を使いこなすためのバランス感覚、体幹もとても弱くなっている様子がうかがえました。

大切な命をコロナウィルスから守り安全に育てるためには、人込みを避け、家の中で過ごすしかなかったのですから、誰のせいでもありません。

しっかり立つこと、きちんと座ること、少しの時間でも体勢を保持することが苦手な姿が多いことを私たちは実感し、何とかしなければという思いに駆られました。

それからは、子ども達が歩く経験を意識的に取り入れてきました。

また広い場所で全体を見渡すことや一点を見たり、遠くを見たり、生活の中で聞こえてくる音を見つけたり、何より話を聞く楽しい経験も積んできました。

アスレチック広場の拡張により環境も充実しただけでなく、上り下りを使った鬼ごっこや、急こう配のがけのぼりなど、先生たちは子ども達の意欲を損なわずに、身体全体を使い楽しめる遊びを意識して取り入れてきました。


その間、ちいさな怪我は沢山あったけれど、どの子も足取りが力強くなったのではないでしょうか。

年少児たちは、まだ入園して一年もたたない中ですので、これからの成長を楽しみにして頂きたいと思います。

それでもお兄さんお姉さんたちの姿に触発され、今ではドングリの森を上からのぞくと、たいてい年少組の子どもたちが遊んでいます。

先日はピンク組の子ども達が新しいアスレチックの上り棒から、いとも簡単にスルスルと降りてくる姿に出くわし「すごいねー」と声をかけると、「こんなの簡単だよー」と返ってきました。

そんな風に自信満々で答えるようになるまでに、先生達が手を差し伸べ、落ちないようにと支えてきたことを、子ども達自身は気付いていないでしょう。

いずれにしても、子どもにとっては実体験がなにより本物の力になる学びです。幼稚園の遊具、環境はすべて子ども達のために考え作られているものです。

特に遊具は、子どもにとってあえてノーリスクにはしていません。(安全基準はクリア、点検も怠りませんが)むしろ子ども自身が遊びながらリスクを察知し、自分の力と照らし合わせながらリスクを乗り超えることで、本当の意味でのリスクを避ける力が身につくと考えています。


子どもの意思が芽生えようとしているときに、危ないからあなたにはできませんと決めつけて、やらせなければ、その子のやってみようとする意欲も一緒に失っていくでしょう。


私たち保育者は、子ども自身のチャレンジしたい気持ちが動いているなら、どんなタイミングで、どこを支えることが肝心なのかを見計らい、どうやったらできるのかを子どもと一緒に考えながら、そのチャレンジを支えるのです。



幼児期だからこそ、自分の力で世界を広げていく好奇心をばねにして、生きる意欲を小さな体いっぱいに満たしてほしいと願います。


この意欲が少しの失敗や自分の思い通りにいかないときに感じる葛藤を乗り越える原動力になる筈です。

まだまだこれから続く園生活、年長児たちの闊達で生き生きと成長していく姿を通して、どんな園生活を過ごすことが子ども達の健やかな育ちに大切なのか、コロナによって覆われた暗雲の中に、少しだけ光明が見えてきたような思いです。




 さて、11月には学年やクラスを超え、自分たちの考えた世界観を作り上げていく、「りんりん祭」があります。

運動会が終わった翌々週に、年中、年長児たちは昨年のりんりん祭のことを思い出しながら、今年はみんなでどんなことをやりたいか、小さいお友だちも一緒に交えて取り組んでいくことなども伝え、クラスで話し合いを進めていました。

楽しいアィデアが、沢山出ていましたが、果たしてどんな活動になるでしょう。


「あっ!いいことかんがえた!!」

と子ども達の言葉が飛び交う様子が、今から楽しみです。

これから出るお便りには、じっくりと目を通していただき、お子様と楽しみにお話して頂ければと思います。



 日本の教育は「主体的で、対話的な深い学び」へと向かい始めています。


そのはじめの一歩が幼児教育にある、ということを、これからも保護者の皆様にはご理解いただきながら、私たちの保育の在り方をお伝えしていきたいと考えます。



posted by 管理人 at 15:23| 園だより

2022年10月03日

令和4年10月のおたより

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 園長 難波 香織

 毎週末のように台風がやってくることで、災害への備えを強く意識させられる一方で、この地域では比較的被害も少なく、厚木は丹沢や大山が背後にそびえているから雲が流れて来ないのかな?などと不思議に感じているのは私だけでしょうか。


 けれど幼稚園は雑木林に囲まれているので、台風の被害を避けるために、今夏も植木屋さんに木々の状態を見て頂き、剪定をお願いしました。


  

 ここ最近、子ども達は強い日差しを避けるように、涼しいアスレチック広場へ集まってきます。木漏れ日の中、緑色のドングリ拾いを楽しんだり、新しくできたアスレチックに果敢に挑戦したり、どんぐりの森の坂道で鬼ごっこをして駆け回り遊んでいます。

最近では年長さんの真似をして、道のない坂を上ろうと頑張っている小さい子ども達の姿も見られます。


 泥んこになりながらもチャレンジを繰り返す姿を見ていると、もうすぐやってくる運動会という行事に向けて、子ども達の「やってみよう」と思う気持ちの芽生えが何より大切だと感じます。

私たちの運動会は、その取り組み方にこだわりがあるのですが、それは運動会が本番で完成形を「見せるためのもの」ではなく、子ども達が主体となってつくる過程を重視した運動会だということです。

運動会に向けて一人一人の気持ちや今の身体的特徴や運動機能の習熟度を丁寧に受け止め、何より意欲を大切に積み上げていくことに重点を置き、運動会が終わってからも、子ども達の思いや成長が繋がっていくものにしたいと考えております。

いわゆる保育者が主導で練習をさせる事はありませんので、このおたよりをお読み頂いている頃でも、幼稚園の生活は普段とあまり変わらず、子ども達は自分の好きな遊びややりたいことに向かって過ごしているのです。

夏休み明けの子ども達は、一回りも二回りも大きくなり幼稚園に帰ってきました。

夏休み中に身体いっぱいに蓄えたエネルギーを、幼稚園中の遊びの中で様々な形で表出している様子が伺えます。

それを見ても、まさに一年の中で、今こそが運動的な活動に出会う最適な時期かもしれません。自然に自分の体の中のパワーがみなぎり、その力を外へ出し切る爽快感を感じることが出来る運動的な遊びが、この時期に充分に提供できる園環境が大切だと思います。

あくまでもやらされるのではなく自分の選択肢の中で遊びとして出会うことが大切ですし、子ども達の成長過程の中で、自然に目が向き、やってみようと、思い立つ姿を認めていくことが、幼児期の「運動会」という行事に向けての相応しさであると考えます。

そうはいっても年長児たちにとっては、幼稚園生活最後の運動会、今まで見てきたこと経験してきたことを土台に「自分たちの運動会」という意識も育ってきました。

自分たちでお話を作り、振り付けや衣装を考え、皆に見てもらいたい気持ちで張り切って取り組んでいる表現の活動、一人ひとりが自分なりに、やることを決めていく「チャレンジ」、クラスで気持ち(バトン)を繋いでいくリレー、どの競技も自分で向き合い、自分なりに受け止め、仲間と支え合うことの楽しさや喜びに背中を押されて一歩を踏み出していく姿が、とても頼もしく輝いて見えます。

年長児たちのそんな成長の姿を受けて、それぞれの学年でこの運動会のねらいには違いがある事もお伝えしたいと思います。

年中児は、当日ルールを聞いて、今まで経験してきた運動的な動きを駆使しながら臨む競技や、年長児のリレーを見る等、今までの経験から「競うこと」の高揚感を感じ、集団で何かをやることの楽しさを存分に経験できるように保育を進めております。

年少児には、外で遊ぶ楽しさを知り、周りを見ることや、関心を持って聞いたり真似をしたり、身体を使う楽しさを十分に経験することをねらいにしております。

どの学年も、その成長過程を意識して取り組んでおりますが、もちろん、中々運動的なことや外で行う活動に気が向かない子ども達がいることも、個性の一つとして先生たちは受け止めております。


 運動会当日だけが、その子のすべてではありません。


 お子様の出来た出来ないを評価することなく、温かい声援を送って頂きたいと思います。

皆が広い空の下に集い、思い切り身体を動かす心地よさを、楽しかった思い出と共に蓄えてほしいと願っています。


 皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。



 月の後半は、皆で春に植えたサツマイモの収穫とおいもパーティー、ハイキングと季節を楽しむ行事が続きます。


 まだ健康管理への気遣いは続きますが、明るい兆しも見えてきたような気がします。


 若葉会主催のはやしマルシェで、大勢の保護者の皆様にご協力頂いたことで、集うことの楽しさも復活してきました。

思い切ってマルシェの企画をして下さった若葉会執行の皆様の行動力に感謝致します。

そして伸び伸びと育っていく子ども達の命の息吹がもっともっと大きく膨らむような2学期になっていく予感と可能性を感じます。


 本当にご協力ありがとうございました。

posted by 管理人 at 00:00| 園だより

2022年09月15日

令和4年9月のおたより

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 日本中に猛暑と豪雨をもたらした夏休みも終わり、いよいよ2学期が始まります。


 2学期は、どの学年の子ども達にとっても、更に充実した保育活動が展開する生活が続きます。多様で豊かな遊びを通して、この実体験の積み重ねが、一人ひとりの心や身体にたくさんの栄養を与えてくれることと思います。



 しかし久しぶりの幼稚園生活に体がついていかないお子様もいるかもしれません。

ご家庭でも少しずつ規則正しい生活のペースを取り戻して頂くのも大切ですが、お子様が登園を楽しみにできるように、幼稚園でも様々な受け入れ準備を進めております。


 きっと夏休み中にあった楽しかったことや、出来るようになったことなどを、子ども達は沢山お話してくれる事と思いますので、先生達は、じっくりと子ども達の声に耳を傾け、久しぶりの幼稚園に多少の緊張を感じていることも想像できますので、子ども達にとって無理のない、ゆったりとした受け入れを心掛け、新学期のスタートを切りたいと考えております。



 アスレチック広場には新しい遊具を設置いたしましたので、目新しさも手伝って、きっと外遊びもより充実していくと思います。

また、空調や保育室内外の集中清掃も済みました。


 さて、この様に2学期の準備と共に、教職員は、この夏休みの期間に様々な研修に参加し、日々の保育に生かせるようにと、学びを深めてまいりました。

私も久しぶりに対面で行われた研修にいくつか参加致しました。


 オンラインの研修もありましたが、特に対面の研修はコロナウィルスの感染が止まない中でしたが、やはり昔気質の私にとっては、直接学ぶことで、より熱が入るような気がいたしました。

暑い中出かけるのは年齢的にも疲れましたが、対面研修が出来るようになった喜びも付加され、心地よい疲れとなりました。



 その中で東京大学で行われた「あたらしい保育イニシアチブ」という保育に携わる官・民・学が「対話をはじめよう」をコンセプトに学びあう研修もありました。

そこでは保育を取り巻く多種多様な価値観と出会い、現代社会の様相を垣間見るような研修でした。

しかしその中で最も注目したのは、今の世界情勢の中で果たすべき保育の役割についてのセッションでした。

世界中の保育現場を研究されている先生の講義でしたが、子どもは一市民である、として「対話」を保育、教育活動の中心に据えている、イタリアのレッジョエミリア市の教育の紹介と共に、今年に入り、欧州幼児教育研究機構をはじめとして、全米や東南アジアの保育団体が一斉に幼児期の子ども達が保育活動の中で民主主義を学ぶ機会を作るべきであるというメッセージを発信しているということを報告されておりました。

これはウクライナへのロシアの軍事侵攻への抗議と専制主義がもたらす悲惨な世界情勢を受け、世界の幼児教育、保育の潮流として


「子どもは権利を有する主体であり、自分が世界の一員であることを身の回りの環境と対話しながら、遊ぶ事、探求する事、知る事、実践する事を通して学ぶ主体である」


という民主主義の価値観へいざなう必要性が議論されているとのことでした。

そして、保育者はこの価値観を共有し、保育の柱に民主的な価値観を据え、かつ持続可能な社会(SDGs)を担っていく子どもたちを育んでいこう、という強いメッセージが発せられたということでした。


民主的な学びへの取り組みの事例で、サークルタイムを保育に取り入れ、子どもたちが話し合う時間を作り、様々な問題についてディスカッションをしている園の話も聞くことが出来ました。

共感しながら実践事例を聞くうちに、ふと自園の様子を振り返ると、実は25年程前から、毎日の帰りの会や子どもたちと話し合うべき問題が起きた時等の集まり方は、円集合だったのです。


クラスの皆で顔を見合いながら、みんなでワイワイ話ができるような帰りの会が出来るように、と意識した円集合でした。

そして、子ども達には、帰る時までに、何か伝えたいこと、感じたこと、聞いてほしいことが有って欲しい、そんな園生活を毎日送ってほしいと願っていました。


 先生達には、円集合で行う帰りの会は、歌を唄って、手紙を配り、先生の話を聞くだけの時間にはしない、子どもの声を聴いて、語り合えるような子ども達と先生の「やり取りのある」良い時間にしてほしいと伝えておりました。


 私たちの保育には、既に子どもが自分の思いを発信し合えるサークルがあるのです。


 改めて申しますと、私は、自園の保育を通して子ども達には、問題解決能力の一つとして、民主的な思考力が育ってほしいと願っておりました。

 そしていま取り組んでいる日常の保育が、今の世界情勢を機にその方法論に注目が集まっていることに驚きました。

また私たちの日常の園生活で行っている子ども達の話し合いの場面やそこに携わる保育者の関わり方が、いかに重要な役割を果たし、導くことが出来るのかということを改めて真摯に考えるきっかけとなりました。


 やり方が同じ、似ているからと言って、必ずしも成果があるとは言えないとも思います。私たち保育者がどのような思いで子どもと関わり、子どもと信頼関係を築き、子ども同士の対話の場面に処するのか、先生達とも改めて学ぶ機会を持ちたいと強く感じております。



 2学期も保護者の皆様と手を携え、子どもたちを真ん中に置いた保育をしていきたいと考えております。


ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。


園長 難波 香織
posted by 管理人 at 13:44| 園だより