
梅の花が満開となり、春風が吹く度に、園庭に薄ピンクの花びらが舞うように散っています。
いよいよ令和2年度の最後のお便りです。
今年度はあらゆることが変則的な年でしたが、日々の生活や年間の行事を教職員が皆で考え合い、工夫し、子ども達にとって、その時々の経験が少しでも豊かに広がるように、また、一人ひとりの気づきや学びが深まるようにと、保育をして参りました。
例年でしたら保護者の皆様に、もっと園へ足を運んで頂く機会を設け、お子様の様子を、直にご覧頂けるはずでしたが、それもままならずに、この時期を迎えることは、正直心残りな思いでおります。しかし、3学期に入ってから、園内の至る所で目にする子ども達の生き生きとした姿に出会う度に、確実な成長への手応えと、その子なりの個性や良さを様々な場面で受け止められた喜びを感じながら、ここまで来られたことを、皆様に感謝の気持ちと共にお伝えしなければならないと感じております。
これは、保護者の皆様が、園を信頼し、大切なお子様を託して下さったからであり、また、日常的に沢山のご協力を頂くことが出来たからこそだと思っております。若葉会本部役員の皆様をはじめ、全保護者の皆様の温かいご支援、本当に有り難うございました。そして子ども達がコロナウィルスへの不安を払拭できるようになるまでには、しばらく時間がかかると思いますので、子ども達が伸び伸びと育っていくためにも、家族の存在と周りの人達の理解が何より大切になってくるでしょう。子ども達にとって一日でも早く、子どもらしい生活が保障される環境と社会の理解がこれからの課題であると感じております。
今、卒園を控えた年長児達は、「遊び」という学びへ向かう為に必要な基礎、土台を踏み固めるように、様々な経験を積み上げている様子が随所に見られ頼もしく感じます。小学校生活への多少の不安は誰もが感じる事かもしれませんが、はやしっ子達の「自分で考え決めること、自分の興味や関心を持って探求する事、諦めない粘り強さ」は、どんな状況にあっても、きっと輝いてくれるのではないでしょうか。
今は卒園遠足のために、グループ作りや行程を自分達で相談し一日の過ごし方を話し合いながら決めていく活動を進めています。どの子も、自分らしさに自信を持って、前を向いて歩んで欲しいと、心からのエールをこれからもずっと送り続けたいと思っております。
年中児達は、年長児との関わりが深まったりんりん祭をきっかけに、大きく姿が変化し、仲間と一緒に考えたり工夫したりするのが、とても楽しくなってきている様子が見受けられるようになりました。人との関わり方も言葉だけでなく、友だちと遊びを共有するために、同じものを工作やブロックで作り、お互いの工夫やこだわりを見せ合っている様子も見かけます。何気ない場面で『園長先生、あのね・・・』とあちらこちらから語りかけてくる張りのある声からも、年長になる事への期待が大きく膨らんでいるのを感じます。
年少児達は、まだ自分本位な姿で伸び伸びと遊び呆けるように園生活を送っている日々ですが、大分周りのお友達や周囲で起きている出来事へ関心が持てるようになってきました。
子ども達にとって、幼稚園で出会うことの多くは楽しい反面、様々な葛藤を感じる経験です。思い通りにいかないことや、今まで気付かなかったことへの驚きや不安などが心の中でうごめいているのでしょう。少し反抗的な物言いになったり、無理なわがままを通そうとしながらも、人や社会との距離感を試しながら確認している時期かもしれません。
さて一番小さな満三歳の子ども達は、周りのお友達や先生が楽しくしていることに心が動き一緒に楽しむ、ということが喜びになる、そんな心を動かす経験が何より沢山出来ました。まだ言葉や行動には個人差がありますが、心が動くと言うことは「感じて考える」ということです。身体を思う存分動かし、心も動かす生活は、自ずと主体的な心(自我)を創っていくでしょう。
このように私達の目の前にいる小さな人間達は「人と成る練習」の為に小さな一歩を自分で踏み出し、日々を繰り返し、試しながら成長していくのでしょう。これからも、試行錯誤を楽しめる子ども達であってほしい、と願っております。
子ども達を「一つ一つ違う花」と例えるならば、大地に蒔かれた小さな種から、根を張り、芽を出し、双葉を開き、葉を茂らせ、美しい花を咲かせる、そんな成長の姿の中に、「遊び」と言う最高の栄養が、その質と量のバランスを保ちながら欠くべからざるものである、ということを改めて申し添え、今年度、最後のご挨拶とさせて頂きたいと存じます。