2022年05月31日

令和4年5月のおたより

今、園庭には大きなこいのぼりが、青い空の中、風を受けて泳いでいます。


そのコントラストが美しく、毎年のことながらその姿に目を奪われます。

こいのぼりは、端午の節句の象徴で、子どもの誕生と健やかな成長を願って、大空に掲げられるようになったことが由来です。

園のこいのぼりは、縦ではなく横に張ってつるしているため、子ども達は吸い寄せられるように大きなしっぽをつかもうと、触りにきます。

そんな子ども達を見て、コロナ禍といわれる状況下でも、こいのぼりの由来の通り、「健康」と「安全」という子どもの成長にとって一番大切な社会状況が、一日も早く提供できるようになって欲しいと願うばかりです。



さて、私はよくカメラを首から下げ、園内中を歩き回っているのですが、保育室に私が入ると、子ども達の目線が集まります。

新入園児の中には、馴染みのない大人の登場に動きを止める子どももいれば、担任の先生にそっと身を寄せる子もいます。

緊張させてしまったことを心の中で詫びつつも、私(侵入者?)に対して情報を収集しようとする敏感な姿に感心します。


そんなとき、改めて人は生まれながらに主体的だと感じます。

多くの研究で、人は本来、主体的存在であるといわれています。


それを感じたのは、先日の我が子との関わりでした。

ここのところの気温の上昇もあり、軽い水遊びをしたときのことです。

ベランダに水を入れたベビーバスを置き、娘を抱き上げてそこに入れようとすると、彼女は足を縮めて泣き出しました。

昨年、水遊びを思い切り楽しんでいたので、あれ?と思いつつ、すぐに抱き上げ「ごめんね」と言ってから、そのままシャボン玉遊びに切り替えました。

しばらくして、娘がバシャバシャと水を触りだしました。

カップに水を入れたり出したりし、陽の光をうけて水しぶきがきらきら光るのを見て笑い声をあげ、それから足を挙げて自ら水の中に入っていきました。


 突然、抱き上げられて自分の意思とは関係なく水に入れられそうになり不安になる。

自分のペースで、対象物(水)と関わることで、少しずつその楽しさを感じ、自分から水の中に入っていく。

娘のそんな姿から改めて大事なことを教えてもらい、「なるほどねー」と独り言をいっていました。

人は準備ができていないのに無理やりさせられると不安になったり、自信を無くしたり、場合によってはやろうとしなくなってしまいます。

けれど、どんなことでも、自分のタイミングで心が動いたときに行動できると、生き生きとし始める。

そう考えると、昨今、主体性がないといわれる子どもは、そもそも主体性が乏しいのではなく、主体的に行動しにくい環境が多いために、いつのまにか主体的に動けなくなってしまうのではないか、と感じました。


そうはいっても、家庭生活ではそんなに悠長なことはいってられないかもしれません。

仕事や家事が怒涛の様に続く日々の中で、子どもの思いに耳を傾け、待ってあげて、子どもの意思(主体性)を大切にするといっても、なかなか難しいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


しかし、幼稚園は違います。

子どもが始めたことをまず大事にし、その姿を肯定的に受け止めます。

保育者が子どもとのそんな関わりを重ねることから、子ども達の中に「もっとやりたい」という意思が生まれます。

子どもが考えたことを受け止めて、生かす生活を展開する中で、子ども達は生き生きと遊びや生活に取り組んでいきます。

そんな「やりたい!」と思う環境づくりを先生たちは日々試行錯誤しながら構成し、提供をしています。


こんな日々の保育の様子を、クラス担任は、クラスだよりで発信をしていますが、保護者の皆様もクラスで起きている子ども達のわくわく感を楽しみにして頂きたいと思います。




先日のお誕生会後の歓談での、ある保護者の方のお話です。

その方のお子様は、幼稚園でみつけた大切なものをポケットにいれて持ち帰ってきているそうで、ある時は石、または枯れた花や葉っぱだったりと、毎日聞くお話が楽しみだったそうです。ある日、小さな蛾(もちろん息絶えていました)を持って帰ってきたそうで、お母様も、それにはびっくりしたけれども、今まで虫が苦手だった我が子の変化に、ある意味感心された、というエピソードでした。

大人にとっては、ほんの小さな虫ですが、子どもにとっては、「お友だちが捕ってくれた」だけで、大切な宝物に昇格するのです。



心理学者のピアジェは子どもは小さな科学者だといっていますが、まさしくその通りだと日々感じます。

レーチエルカーソンが「センスオブワンダー」で神秘さや不思議さに目を見張る心の大切さを記したように、日々子ども達は主体的に心を動かしているのです。


もうすでに、園内では様々な虫が活動を始めています。もしかしたらお子様の絵本バックやズボンのポケットにダンゴムシや蝶々などが入っていて、保護者の方は悲鳴をあげるかもしれません。

でも自然に対する「関心、探求心が芽生えている」と捉えて、子どもたちの行為を肯定的に見守り、その先へと伸びていく育ちを楽しみにしていただけたらと思います。




さて、3年ぶりに行いました身体測定、クラス懇談会には、保護者の皆さまにご協力頂き、滞りなく行うことが出来ました。

ご協力ありがとうございました。

その折、新年度の若葉会役員にご協力頂き、心よりお礼を申し上げます。


懇談会では、どのクラスもとても和やかに行うことが出来、その流れで親子遠足も、保護者の皆様と一層、親睦が深まるようになればと考えております。

この行事を契機に、保護者の皆さまと園がしっかり連携し、子ども達の園生活がより充実したものと成る様にしていきたいと存じます。


どうぞよろしくお願い申し上げます。



副園長 難波 忠弘

posted by 管理人 at 00:00| 園だより