2021年11月29日

令和3年12月のおたより

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今年もあとひと月あまりとなりました。


手元にある歳時記カレンダーに目を止めると、冷たい北風が木の葉を散らす頃「朔風払葉 さくふう、はを、はらう」とありました。このように私たちの暮らしには、四季の移り変わりを自然から学び、自然と共に生活を営んできた先人からの知恵が、美しい言葉と風情で表現されています。

このカレンダーを眺めるたびに、園内の様子や園児たちの姿に自然の移り変わりが反映されていることに納得をしています。冷たい木枯らしの中でも、子どもたちは実によく外遊びをしています。


ほとんどの子どもが外に繰り出していることもよくあり、子どもの様子を見るために園庭からアスレチックをぐるりと回ってみますと、先日、日当たりのよい南側の小道で、満三歳児が小さなベンチに体を寄せ合って4人で座っていました。何やらクスクス笑いながらとても楽しそうにおしゃべりをしています。

そこを通りかかると、「あっ!園長先生、座っていいよ、どうぞ」と声をかけてくれましたが、どう見ても私のお尻は半分も乗り切れません。けれどその笑顔に引き込まれて無理やり座ると「ねっ、あったかいでしょ?」と4人は自分たちの見つけたことを、とても嬉しそうに笑いながら教えてくれました。4人は手を握り合って「手も、あったかいんだよ」とも教えてくれました。


こんな何気ない子ども同士の素敵なやり取りや冷たい風にも負けないでアスレチック広場を縦横無尽に駆け回り鬼ごっこに興じる子ども達、泥団子を作るための土探し、土作りの過程で、まるで研究者のように遊んでいる様子など、子ども達の園生活がまさにのびのびとした充実期に向かっているのを感じられるようになりました。そんな子ども達は、12月4日に行われる「はばたきの会」という表現の活動へと少しずつ、興味が向かっているところです。


幼児教育では表現はとても重要な教育課程のひとつですが、幼児にとっての表現とは?と考えてみるととても大切なことが見えてくるのです。まず、幼児期をひとくくりにはできない、その年齢なりの発達段階がある事です。3歳なりの表現を無理やり5歳並みにする必要はないということです。


そして一人一人には大切な個性があるということも忘れてはいけません。自分なりの表現が出来るということは、とても楽しいことですし、その上「できた!という自信を感じる」経験ができるのは大切なことです。また、クラスの友達と一緒に何かを共有しながらやることには、連帯感だけでなく、任される責任感の様な感覚も伴うことでしょう。出来たことをお家の方に見て欲しいと願う心の内には「うれし、はずかし」という感覚を覚えることもあると思います。


そして、表現の本質はこども主体であるということです。大人が型どおりのことを教えて繰り返し練習をさせ完成形を見せることではない、ということです。子ども達が楽しいからやりたいこと、もっとやりたいことになるように進めていきたいと考えております。

はばたきの会に向けて活動を進めていく期間は短いのですが、その間でみられる子ども達の心模様の変化は、とても大きく揺れ動いているようです。自ら心が動き、頭が働き、身体全体で表していく、そんな子ども主体の活動ですので、温かく見守っていただきたいと思います。詳細については後日おたよりでお知らせいたします。


さて、2学期の最後にはクリスマス会をいたします。毎年お伝えしていますが、子ども達はこの一年間、どの子もが、良い子であったことをおうちの方にはもちろんのこと、周りの大人たち皆から認めてもらえることを願っているのです。


そして、子ども時代には、どこか遠い遠い空の上から、一人ひとりの良い子達を見守ってくれている誰かがいることを、信じられる子どもたちであってほしいと思います。子ども達は誰もが皆、自分は良い子でありたいと心から望んでいるのです。クリスマスはそんな望みがかなう日です。


この日は幼稚園の一日が幻想的に変わります。子ども達によるキャンドルサービスや演奏会など落ち着いた雰囲気の中で会を楽しみ、先生たちも、いつもとは違う装いでその日の雰囲気を演出し、子ども達と夢と幻想の世界の中でクリスマス会を楽しみたいと考えております。執行役員の皆様には、裏方でお手伝いを頂きます。ご協力をいつもありがとうございます。


冬休みはご家族でどのように過ごされるでしょうか。

日本国内では、コロナが少し落ち着いてきているとはいえ、以前のように無防備に出歩くことは難しいかもしれませんが、今年は久しぶりに故郷へ向かう方もいるかもしれませんし、ご親せきやご友人と過ごす楽しい時間もあるかもしれません


基本的な感染対策として換気や手洗い消毒、場合によってはマスクの着用などの必要はあるとは思いますが、少しゆったりとした心持ちで、ご家族でよい時間を過ごしていただきたいと思います。孤立感が漂ったコロナ禍を振り返ると、「人とは、人のぬくもりと共にあるものだ。」と実感しております。


どうぞ、温かなぬくもりに満ちた新しい年を皆さまでお迎えください。

posted by 管理人 at 17:05| はやしのブログ

2021年11月02日

令和3年11月のおたより

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朝晩の冷え込みが、秋を一気に通り過ぎたように厳しく感じる日もあり、幼稚園でも子ども達の体調管理に気を配ることが多くなりました。まだ、コロナウィルスへの警戒感もあり、今年度はいろいろな面で慎重にならざるを得ません。


そんな中、運動会の開催にあたっては、保護者の皆様のご協力に、心から感謝申し上げます。子ども達の笑顔が戸室小学校の校庭に満開の花のように広がった運動会、あの場に集った大人たちの温かく見守る思いが、子どもたちの安心感を生み,のびのびと自己発揮する原動力になったのではないでしょうか。


あれから子ども達は、まだ運動会の余韻の中で表現や運動遊び、チャレンジへ取り組む姿が見られます。はやし幼稚園の行事活動は、行事の終わりと共に、そのまま収束するものではありません。

子ども達の園生活の過程で、行事はいつも子どもの次の行動のきっかけとなるものです。次への期待をもって、子ども自身がステップアップさせていくのが、常なのです。

そんな子ども自身の「楽しいからもっとやりたい、難しいけれどがんばりたい」という気持ちから取り組む姿を子どもたち同士で、響かせながら伸びていく、運動会はそんな行事の一つです。


2学期の後半、まだ様々な行事が続きますが、まずは、11月初旬のりんりん祭です。今年もどんな世界を作ろうかと年長児と年中児たちが、自分たちの考えを出し合い、相談しながら作り上げていくでしょう。今年は年少さんたちも自然な流れの中で活動に加わっていきたいと考えてもおりますので、幼稚園中の子ども達皆が多いに関わり合える楽しいお祭りになることだと思います。


保護者の皆様をお招きすることはできませんが、お子様がお家でお話しすることを、じっくり聞いて、相談に乗っていただいたり、クラスのおたよりなどをご覧いただいたりし、子ども主体の活動としてどんなお祭りが出来ていくのかを、楽しみにして頂きたいと思います。若葉会主催のお楽しみ会では、今年もロバの音楽座の皆さんをお招きしてコンサートをして頂けることとなりました。ご協力ありがとうございます。


 最近は教職員研修もリモートということで、慣れないパソコンでの研修となっていますが、先日福島県、相馬市の小児科医として、「福島の子ども達を日本一元気にしたい!」という願いをもって東日本大震災後の子ども達の心身の健康調査研究をされておられる先生のお話を伺う機会がありました。

 子どもの健康調査ということで大変興味深い内容でした。特に震災後の福島の子ども達の生育環境の変化から見られる運動量の低下や全国的に見て高い比率の肥満との関係を示すデータから、実はコロナ禍の中で育つ日本中のこども達の生育環境の変化と相似している点を話されていました。外遊びをのびのびと出来なくなった生育環境が子ども達の心身の健やかな成長を阻んでいるということを、そのお話を通じて強く感じた次第です。

 ちなみに、未就学児の運動量の調査では1週間の平均歩数が、震災4年後の調査で、一日1万数千歩程度であったそうですが、保護者の皆さんが子供だった頃の30年前の調査では、幼児は一日2万5千歩から3万歩ほど歩いていたということです。

 福島の子ども達の調査研究から、身体と心の健康の問題、育つ社会の健康度の低下、一気に進む人口減少、少子化、災害などが子ども達に何をもたらすのか、ということを提起すると同時に、まさに今を生きる子ども達が抱える課題があらわになったのです。

 この研究結果の一つとして、福島のこどもたちの健やかな育ちを考えた末、室内でのびのびと遊べる施設を官民共同で作られました。年間30万人の利用があるそうですが、そこでは遊びの必要条件として3つの間を提供しているそうです。

 時間と空間と仲間、そして遊びを支えるプレイリーダーの存在だそうです。人間の成長過程で脳神経系が最も育つ幼児期には、のびのびと自分を出せる環境で、人や物、事と主体的に関わりながら遊ぶことがいかに大切か、ということを改めて確認できる研修となりました。
posted by 管理人 at 13:41| はやしのブログ